医学部の男子優遇、していた理由をはっきりさせて!(石田純一)

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石田純一の「これだけ言わせて!」 第32回

 昨年騒ぎになった医学部合格率の男女格差。昨春の入試では、医学部全体の平均で男子の合格率は女子の1.22倍だったが、今春は1.10倍にまで下がったという。まずはよかったけれど、昨年までの男女格差に驚かされる。なにしろ、昨年の男女の合格率を大学別に見ると、この問題の発端となった東京医大では、男子の合格率は女子のなんと3.11倍。そのほか日大が2.02倍、順天堂大が1.93倍と、たいへんな数字が並んでいる。

 それでも私立大学の場合は、百歩譲って、大学ごとの考え方があっても悪いとは言えない。寄付が多い人を優先するなど、経営に直結する問題もあるだろう。でも、国立大学は事情が違う。税金が私学の何倍も投じられる国立大は、やっぱり男女に機会均等でなければまずいのではないか。ところがだ。昨年は国立大も、新潟大1.79倍、筑波大1.72倍、北海道大1.55倍、千葉大と山梨大が1.51倍という数字が並んでいた。

 今春は新潟大1.29倍、筑波大も1.29倍、北海道大1.23倍、千葉大1.05倍、山梨大にいたっては0.87倍まで下げてきた。向かっている方向性は評価したいけど、あらためて、国立でもこんなに差が開いていたのか、と驚くとともに、なぜこれほどの男女の格差があったのか、いまなお、まともな説明もないのが解せない。

 この問題、なにより気の毒なのは、大人の事情など知らずに頑張ってきた受験生だ。今回こうした数字が明るみに出るまで、大学ごとに男女の合格率にこんなに差があるだなんて、夢にも思わずに頑張ってきたに違いない。最初から「うちの大学はこれこれこういう理由で男子をこれだけ優遇します」というアナウンスがあれば、受験生も別の大学をめざすことができただろうに。若者の努力を無にしないためにも、フェアな情報公開が欠かせないはずなのだ。お願いしますよ、いまからでも。

 浪人回数が多い受験生にペナルティが課されていたのも気の毒だ。何年も浪人した人は医師国家試験の合格率も低い、というデータはあるのかもしれないが、石にかじりついても頑張ってきた人を、そこまで目の敵にしなくても、と思ってしまう。

 もっとも、医師とは僕らが健康や、時には生死を委ねる職業だから、杓子定規に「男女平等」を叫ぶだけでは、すまない問題もあるのだろう。緊急救命医や僻地医療など、女子が比較的避ける傾向のある分野で医師を確保するには男子が必要だ、という意見も聞いたことはある。実際、僕の知人でも女子の小児科医とかは少なく、整形とか美容外科、皮膚科などが多いようには感じる。出産や子育てを考えると、過重労働は避けたいと思うのかもしれないが、そうした問題をふくめて議論していかなきゃ! 医師も人気分野に流れがちなのであれば、不人気分野を選んだ医師への優遇策があってもいいだろう。

 話は変わるが、先の統一地方選の後半戦では、立憲民主党公認の女性候補が全員当選した。いま、有権者が女性を求めているのか。たとえば、介護問題とか保育園の問題などは、子供を育てながら介護にも直面しているような女性の訴えのほうがリアリティがある。あるいは、ITエンジニアだった女性の政界進出などに新しい世代を感じる。

 このことは参院選でもヒントになると思うが、医療の分野でも同じではないか。医療の面でも新しい男女の分業を模索する。そんなことが、医学部入試の男女格差を本質的に是正するきっかけになるのではないだろうか。

石田純一(いしだ・じゅんいち)
1954年生まれ。東京都出身。ドラマ・バラエティを中心に幅広く活動中。妻でプロゴルファーの東尾理子さんとの間には、12年に誕生した理汰郎くんと2人の女児がいる。元プロ野球選手の東尾修さんは義父にあたる。

2019年6月3日掲載

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