戦争発言、差別発言だけじゃない 「維新の会」の議員はなぜ失言・暴言を繰り返すのか

国内 政治

  • ブックマーク

Advertisement

問われる維新の教育

 維新の問題発言と言えば、やはり大阪市長だった橋下徹氏の「慰安婦発言」が原点だろう。13年5月、記者団に対して「慰安婦制度が必要(だった)のは誰だって分かる」と指摘。国内だけでなく海外メディアも大きく報道する事態になった。

 最初の発言は午前中に行われ、夕方には「慰安婦制度は今は認められないが、風俗業は必要だと思う。沖縄に行った時、米軍司令官に会い『もっと風俗業を活用してほしい』と言った」と釈明し、これも賛否両論を呼んだ。

 更に当時は維新の衆議院議員だった西村眞悟氏(70)が「韓国人の売春婦はまだ日本にうようよいる」と発言して撤回。当時は維新に所属していた中山成彬・衆議院議員(75)が慰安婦の強制連行問題で「自分の子や近所の娘が連行されるのを黙って見ていたのか。そんなに朝鮮人は弱虫だったのか」と述べ、これも批判を浴びた。

 同年7月には共同代表を務めていた石原慎太郎氏(86)が街頭演説で、拉致被害者の横田めぐみさんについて「非常に日本的な美人だから、強引に結婚させられて子どもまで産まされた。誰か偉い人のお妾(めかけ)になっているに違いない」と発言した。

 地方議員については割愛する。だが1例だけ挙げておけば、14年に当時の維新府議が、女子中学生とLINEで交流していたところ、グループから外されたことに立腹。「ただでは済まさない」「校長に電話する」などとメッセージを送ったことが大きく報道されたことは記憶に新しい。

 あまりに失言・暴言が多く、振り返るのも大変だが、なぜこんなことが続いているのか、政治アナリストの伊藤惇夫氏は「維新政治塾によって候補者を集めるというシステムが1つの原因でしょう」と指摘する。

「政治家になる順序を考えれば、実現したいビジョンや政策が先にあり、それを実現する手段として立候補するのが基本でしょう。ところが維新政治塾は、受講料を払って参加します。こうなると、『何が何でも政治家になりたい』、『とにかく議員バッジをつけたい』と、政策より議員になることが最優先という方々が増えてしまいます。そして、これだけ問題発言が繰り返されてきたとなると、塾の教育に疑問を抱かざるを得ません。国政の立候補者に相応しい人材を育成できていないのではないでしょうか」

 原因の1つに、政界の人材不足がある。とにかく立候補してくれる人がいない。それは自民党でも変わらないという。

「魔の3回生の問題は、自民党でさえ寄せ集め、かき集めの立候補者で選挙を戦ってきたことを物語っています。そして小選挙区制ですから、どうしても有権者は候補者より政党の名前で投票してしまいます。維新なら足立康史議員や丸山穂高議員という個人に投票したというより、橋下徹さんや松井一郎・大阪市長(55)を応援しようと思って1票を投じるわけです」

 更に問題発言の主が高学歴という点にも驚かされる。表にまとめてみた。

「立候補者の不足で、自民党も公募を行っています。実は旧民主党が始めたのですが、内情は替わりません。党の担当者が応募者の履歴書を見て、高い学歴やエリートとしての職歴があれば候補に残し、有権者に好感を持たれる立ち居振る舞いなら合格です。すると結局、優等生ばかりが立候補者になってしまう。しかし、優等生でも政治家の資質に欠けている人は存在しますが、公募の選考システムでは見抜くことができません」(同・伊藤氏)

 最後に伊藤氏は「世論の批判はブーメランとなって有権者1人1人に返ってきます」と警鐘を鳴らす。

「繰り返しになりますが、小選挙区制は政党が全面に出る選挙制度です。候補者は“駒”となる傾向があります。とはいえ、候補者が自分の経歴を公開して選挙に挑むのも事実です。やはり、できるだけ候補者個人を見て投票しなければ、第2、第3の丸山議員を当選させてしまうと肝に銘じるべきでしょう」

週刊新潮WEB取材班

週刊新潮 2019年5月29日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。