14億円横領のアニータ夫、今も青森への返済なし 「生活に余裕がない」の言い分

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「広告塔にされた」

 では、当の千田氏はなんと説明するだろうか。

「駆け込み寺を辞めたのは、玄さんが自分をメディアに出して、広告塔にしようとしたからです。昨年12月にも事務所でのクリスマス会に、新聞社の人が取材をさせてほしいと押しかけてきて、玄さんに“約束しちゃったから受けて”と言われたんです。私は途中で逃げました。NHKは、玄さんに“過去を清算したほうがいい”と説得され、これ1本はしょうがないと受けましたが、ほかにも取材を受けるように言われました。親に相談したら、玄さんが私を利用しているのではないかということがわかってきて、兄貴からも“事件を起こした奴が経理で雇われるって、裏があると思わなかったのか”と言われたので、家族に“辞める”と言って、実際に辞めました」

 お金を持ち逃げした、という疑いはどうか。

「知らないよ、そんなこと。絶対やってないです。ひどいですよ。代表からも、駆け込み寺のほかの人からも、その内容の連絡はメールもLINEも電話も一切ない。たかが7万円。無くなっていると言ってくれれば返しますよ。俺が盗んだと言われるのは心外だけど、管理責任は私にあるから返しますよ。そもそもNHKに出るのが決まってるのに、盗むわけがない。いまの埼玉に引っ越す前は新宿にいて、携帯の番号も変えていません。電話をかけてくればいいじゃないですか」

 玄代表は再三連絡をしたと言っているが、それはともかく、なぜ青森県に返済しないのか。

「払う気持ちがあっても払えないんです。働くようになって余裕ができたら、月1万円ずつでも払おうと思っていますが、生活に余裕がないので法的に問題ないはずです。いま年金を2カ月に1回、14万円と、生活保護を月2万円受給しています。マザーハウスに騙されて生活保護を受給している状態です。私はマザーハウスに、埼玉への引っ越し代と敷金、礼金合わせて40万円を払いましたが、これは物件を貸す代わりにボランティアを週3回するという契約でした。私は働いて月に1万円でも返したいのに、そんな契約をさせられてしまったのです」

 たしかに、謝罪や感謝の言葉はどこにも見当たらない。ちなみに、マザーハウスも出所者の社会復帰のサポートをするNPOだ。五十嵐弘志代表に聞くと、

「今年2月か3月、千田さんから事務所に“仕事を紹介してくれ”という電話がありました。“マスコミに追いかけられていて仕事が見つからない”と、少し病んだ感じなので、“病院に行ったほうがいい”とも伝えましたね。その後、僕が電話を受けたのは4週間後くらいで、新宿で会いましたけど、“朝、マンションのドアをバンバン叩く奴がいる”“手記を書くように言われて書いたのに、原稿を持ち逃げされた”“アニータに利用された”なんて延々と話すので、“警察に相談したら”と言うくらいしかありませんでした。その後電話があっても、やはり支離滅裂なので、“精神的に病んでいるならここに相談するといい”と、行政機関の窓口の連絡先を伝えました。僕と千田さんのやり取りはそれだけです」

 いずれにせよ、千田氏に反省の念と返済の意思がないことは、たしかなようだ。そんな彼がジャン・バルジャンになる可能性を問うては、泉下のユーゴーに失礼だったかもしれない。

週刊新潮 2019年5月23日号掲載

特集「『ジャン・バルジャン』になれなかった 14億円横領の『アニータ』夫」より

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