ZOZO前澤社長のビジネスモデル崩壊を招いた「つけ払い」専門家が解説

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「資金繰り逼迫問題」

 続いて、「月に10億円超の資金流出」については、こう分析する。

「18年3月期末の決算期末直前、ZOZOは資金余剰から資金不足に大転換しました。順に追っていくと、18年3月期に3億円、同年6月第1四半期に55億円、同年12月第3四半期に142億円の正味運転資金不足になった。つまり、僅か9カ月間で資金不足額は139億円に拡大し、月額で言えば15・4億円の資金が流出したのです」

 もっとも、19年3月期にZOZOはPB事業からの撤退を決め、在庫の評価額減を7億円計上した。したがって、

「月次の資金不足はやや収束しつつある。しかし、前述の『つけ払いに関して入金が出金に対して遅れる問題』はなお残るので、今後においても月額数億円の資金不足は避けられません」(同)

 と同時に、ZOZOは自社株に関しても「資金繰り逼迫問題」を抱えている。

 18年5月、前澤社長は保有するZOZO株600万株をZOZOに230億円で売却した。同社の取得単価は1株3845円で、自社株取得のため銀行から240億円を借り入れ、無借金経営からの転落を余儀なくされた。

「ZOZOの株価は現在2千円程度なので、ZOZOは前澤氏から買わされた自社株に110億円程度の含み損を抱えています。前澤氏が自社株をZOZOに売ったのは、宇宙旅行とか骨董品や現代アート投資、女優との交際のため資金面で尻に火がついていたからです。すなわちZOZOだけでなく前澤氏自身も資金繰りは火の車。両者が同じタイミングで巨額の資金不足に陥った点が、ZOZOの資金問題を難しくしています。ZOZOは逼迫する資金事情に対処するため、三井住友銀行を幹事銀行とするシンジケートによる150億円のコミットメントライン(銀行融資枠)を3月末に締結しました。前述10億円超の資金流出ペースが鈍化したのを勘案すれば、少なくともあと1年、ZOZOは持ち応えはするでしょう」(同)

 この点についてZOZOの広報担当者に尋ねると、

「目的は、必要運転資金を確保し、財務基盤の一層の強化を図ることです。今後の資金需要を見越して、早期のタイミングで借入枠の手当を行いました」

 と答えた上でこうも言う。

「必要運転資本額が上昇傾向にあるのは事実です。不測の事態に備えた資金工面の対応を行っております」

 斯様(かよう)にも追い込まれた前澤氏率いるZOZOは、どこで判断を間違えたのか。

(2)へつづく

週刊新潮 2019年5月23日号掲載

特集「株の9割が銀行担保! 『アンディ・ウォーホル』も投げ売り! ZOZO『前澤社長』が失った『打ち出の小づち』」より

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