今年は“不安18年” 皆の心の元号は(中川淳一郎)

社会週刊新潮 2019年5月16日号掲載

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 先日、放送作家の藤井青銅さんと、ライターの吉田潮さんと一緒に「平成」を振り返るイベントに参加しました。藤井さんは元号について「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)的に解説してくれ、「なるほど!」と思うことばかりでした。特に面白かったのが、明治、大正、昭和、平成については何年あったかが分かるものの、それより前の慶応以前のものはよく分からない、という指摘です。その流れから、新社長が就任した会社には「躍進」と筆で書かれた額縁が飾られたりしているという「あるある」ネタを紹介。「この会社にとっては新社長就任の年が『躍進元年』、翌年は『躍進2年』です」というたとえも納得です。

 話は「自分の人生で覚えている区切り」と元号の関係にも及びました。「入学」「卒業」「就職」「転職」「結婚」「引越」「離婚」「入院」などは西暦で覚えているわけで、私の場合は今年は退職18年のため「不安18年」になる、ということです。

 あとは真剣に考え抜かれていると思われる元号にも、過去には「キラキラ元号」みたいなものがありました。最近のニュース記事でも、「天翔」がイチ押しだったものの葬儀社が使っているから別の候補を、となって「令和」が登場、というものがありましたが、これもネットでは「キラキラネームかよ」といったツッコミが入りました。藤井さんは「北斗百裂拳」(『北斗の拳』)や「ギャラクティカ・マグナム」(『リングにかけろ』)のような漫画の必殺技と元号は同じようなもの、とも解説します。

 こう考えると、元号というものがより身近に感じられますし、皆が心の中に自由に元号を持ってもいいのかな、とも思います。

 私の場合は、こうして平成最後の日にイベントをやり、会場のお客さんと一緒に改元を祝うような空気になりました。また、5月1日になった瞬間に東京・渋谷のスクランブル交差点でのハイタッチやら大阪・道頓堀川へのダイブをするバカが出るなど、大都市では改元で盛り上がっている感がありました。

 GWに合わせて某地方都市から東京を訪れた友人はこう言っていました。

「改元で世の中盛り上がっているというのをテレビで見たけど、オレの街ではそんなことは微塵も感じられなかった。でも、東京に来たら令和になったんだな、という実感が湧いた。ワサワサして活気があって何やら蠢いている感じがする」

 これには私も同感だったんですよ。何やら盆と正月が一緒にやってきたような感じがし、あの浩宮さまが天皇かァ……といった感慨もあるわけですね。「昭和」から「平成」になった瞬間を、多くの人は「自粛ムードでレンタルビデオ店が繁盛した」「沈鬱だった」などと振り返ります。一方、私は当時はアメリカにいたため、まったく実感がありません。

 将来、「令和」については2019年4月末~5月上旬の10連休を思い出し、「あの時はバカが道頓堀川にダイブしたんだよ。20時台にフライングで飛び込んだらたまたま船が来ていて、幸いなことに置かれたタイヤに頭がぶつかって死なないで済んだんだよ」みたいな話をするのでしょうね。あの男、伝説作りましたね。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。