樹木希林さんが「週刊新潮」に語った「夫・内田裕也をそれでも見放さなかった理由」

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「出会った責任」

〈それでも見放さなかった理由には、おいおい触れるが、まずは内田が住んでいたマンションの室内について。〉

 一度、地震が起きたあとに部屋の写真を持ってきたんです。物が崩れたというので見たんですけど、地震の前と全然変わらない。あまりに雑然としていて気が滅入るから、最近は全然行ってません。とはいえ、月1回は会っていますね。外食するくらい。普段はFAXで連絡をとってます。内田さんは携帯を持ってるけど、あたしはほとんど持ち歩かないので、FAXは紙が届くから、年寄り同士のやり取りには確実なの。それでも日付を間違ったりするからね。あたしがいない日に勝手にFAXを出して、会いに来たら家の扉が閉まってる。そりゃそうよ、FAXが来たことも知らないで仕事に出てるんだから。

〈女グセが治らない内田への嫉妬心はないか、尋ねてみた。〉

 嫉妬とか言ってたら、首に縄つけて引っ張ってなきゃいけない。うふふ。そういう元気はないなぁ。でも、世間に対して不始末があった時に引き受け手がいないと迷惑かけるでしょ。だからあたしがいるのよ。人間はそんなに変わるものじゃありません。年齢は関係ないわね。それでもあたしが見放すことはないわね。出会った責任というのがあるんです。自分が内田さんと出会って、ましてや子供までいる。あたしが生きていて責任を取れるかぎりは取ろうと思ってます。

 でも、向こうが「もう勘弁してくれ」と言ってきたら、別れる覚悟はあるよね。あたしが名前を知ってる方だけでも何人かいるわけですよ、恋人が。「その方と結婚するのはどうですか」と言ってるんですよ。でも内田さんは「俺は結婚は1度しかしねぇ。当たり前だろ、人間として」。うふふ、面白いところで筋が通ってるんですよ。そういう人と出会ったんだから。

 未成熟で勝手なんだよね。大人になってる部分と子供のまんまの部分が体の中でグルグル回ってるから。でも人間としては面白いから。次に会ったら、そうね、「いやぁ、大変だったんだ」と言われてもプッと吹いちゃう。でも、それは悪いから後ろを向いてね。

 毎年、ハワイに行ってるんですよ。向こうで待ち合わせして。部屋は別々に取ってますけどね。やっぱり、あたしも危ないものを持っているから、たまに会うには面白いんですよ。もちろん経費は全部、あたしが持ちますけど。ふっふっふっ、面白く生きないとね。

〈暴力を振るわれたりはしないのだろうか。〉

 刑事さんが言うには、今回の女性には暴力じゃなくて、ステッキを持って振り回したりね。あたしの場合は肋骨を折られたこともありましたしね。包丁だって何本も欠けてるし。あたしもやるんだから、「コノヤローッ」って。やり合うから欠けるんです。だから、あっちばかり悪いということはないし、だから収まらないわけです。背中合わせでそっくりなんです。

〈歪な夫婦関係のなかに、人間の出会いや絆の本質が見えるのは、樹木ならではだろう。さて、この時の後日談は、翌12年2月に語ってくれた。〉

 示談金から弁護士費用まで本木さんが出してくれたの。あたしにはそういうお金を払う人の良さはありません。今は月々の生活費も本木さんが面倒を見てます。それでも内田さんは「こんなんじゃ足りねぇ」って。まぁ本木さんにとっては親ですから、怒るもなにもそういうことを承知で(娘と)結婚したわけで、今はあきらめていると思いますよ。

(2)へつづく

週刊新潮 2019年5月2・9日号掲載

特集「10時間取材から厳選! 『樹木希林』が『週刊新潮』に語った『全身女優』『内田裕也』『死生観』」より

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