緊急取調室、特捜9、科捜研の女…絶好調!テレ朝“春ドラマ”が抱える2つの難題

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満足度も盤石

 同局ドラマの序盤は、視聴率だけでなく、満足度もトップを行く。関東地区960人を対象に5段階の満足度調査を実施しているエイト社「テレビ視聴しつ」によれば、4月の実績は『緊急取調室』が3.96で全14ドラマ中1位。『科捜研の女』は3.80で3位。そして『特捜9』は、3.70で8位となった。全ドラマの平均が3.63なので、3本とも上々の出来となる。

 各ドラマへの感想と評価は以下の通り。

●『緊急取調室』
「期待通りの番組。毎週見たい」女性60歳・満足度4
「前シリーズより迫力と凄みが出たような気がする」男性69歳・満足度5
「天海の味が出てる」男性61歳・満足度4
「深く掘り下げた人間ドラマで毎回楽しめる」女性66歳・満足度5

●『科捜研の女』
「相変わらずの面白さ」男性61歳・満足度4
「このシリーズはずっと見ているので満足」女性50歳・満足度4
「テンポが良い」女性60歳・満足度4
「定番で安心」男性61歳・満足度5

●『特捜9』
「チームワークがまとまっている刑事ものって感じ...」女性63歳・満足度5
「このシリーズはずっと見ているので満足」女性50歳・満足度4
「イノッチが良い」男性61歳・満足度5
「家族で見れる」男性23歳・満足度5

 シリーズ化したドラマならではの“安定した面白さ”を評価する声が多い。ただし高評価は、圧倒的に3層(男女50歳以上)となっている点が気になる。

個人視聴率での課題

 視聴者層については、男女年層別のデータで実態が浮かび上がる。関東2000世帯5000人超の視聴率を調べているスイッチ・メディア・ラボによれば、49歳以下の個人視聴率で見ると、3ドラマの平均で同局は、日テレ・TBS・フジに次いで4位となった。

日テレ『俺のスカート、どこ行った?』が最高の5.9%。次いで日テレ『あなたの番です』・フジ『ラジエーションハウス』・TBS『集団左遷!!』が4%台と好調だった。ところがテレ朝の3本はいずれも2%台。高い世帯視聴率は、高齢者層により支えられていたのである。

 例えばF1(女20~34歳)の個人視聴率では、上記4ドラマの他、TBS『わたし、定時で帰ります。』・日テレ『白衣の戦士!』も5%台で良く見られていた。ところがテレ朝3ドラマは、やはりいずれも2%台と振るわない。世帯視聴率での勝利の方程式は、若年層での個人視聴率で弱点になっていることがわかる。

ネット上での話題性

 若年層で苦戦している他、同局ドラマはネット上でも盛り上がりに欠ける。

 例えば初回の世帯視聴率があまり振るわなかった日テレ『あなたの番です』・フジ『パーフェクトワールド』・日テレ『白衣の戦士!』は、それぞれ7.4%・6.4%・9.6%と一桁スタートとなった。

 ところがYahoo!リアルタイム検索によれば、初回放送後の24時間のツイート数はいずれも2万を超えた。

 一方テレ朝3ドラマは、世帯視聴率的には倍近い数字を獲りながら、ツイート数は半分に満たない。特定ジャンル限定やシリーズ化による安定感は、SNS利用者にとってのワクワク感や新鮮さに欠け、話題に上ることがあまりないようだ。今後の爆発力という意味では、大きな期待は難しそうだ。

 以上のようにテレ朝のドラマは、3層以上の圧倒的な支持の下、安定した実績を今クールも続けそうだ。ただし多くの広告主が求める若年層への訴求力や、ネット上での拡散力には欠ける側面がある。いわば勝利の方程式は、ローリスク・そこそこリターンの戦略と位置付けられそうだ。

 局の番組戦略・編成方針がどうあるかは、もちろん各局の判断だ。それでも若年層にリーチし難く、ネット上の拡散力に欠ける番組は、今後の発展性で不安が残る。現状の高い世帯視聴率と若年層での低い個人視聴率などをどう位置付けるのか。同局の今後の方針がどう変わって行くのか、興味は尽きない。

鈴木祐司(次世代メディア研究所代表、メディア・アナリスト)
1982年にNHK入局。主にドキュメンタリー番組の制作を担当。2003年より解説委員(専門分野はIT・デジタル)。編成局に移ると、大河などドラマのダイジェスト「5分でわかる~」を業界に先駆けて実施したほか、各種番組のミニ動画をネット配信し視聴率UPに取り組んだ。2014年独立、次世代メディア研究所代表・メディアアナリストとして活動。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月5日掲載

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