キャッシュレス決済はそんなにいいか 還元キャンペーンで浮き彫りになったリスク

ビジネス週刊新潮 2019年4月25日号掲載

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 そのバスに乗らないと待ち合わせ時間に間に合わない、というなら、乗り遅れないほうがいいに決まっているが、「バスに乗り遅れるな」という掛け声は、往々にして行き先さえ告げていないから要注意だ。

 たとえば、1940年の日独伊三国同盟への参加を煽った掛け声も「バスに乗り遅れるな」だったが、駆け乗ったバスは対米戦争に突き進み、終点は日本の破滅であった。

 最近でいえば、「バスに乗れ」とうるさいのが、キャッシュレスである。

「日本では、キャッシュレスの利用率は20%ほど。海外では韓国が90%、中国が60%、アメリカが45%などで、日本は圧倒的に現金派が多いのです」

 と、消費生活ジャーナリストの岩田昭男氏は言うが、政府はいま、2025年までにキャッシュレス決済を40%にまで高め、将来は8割にすると、壮大な目標を掲げている。これでは現金派が、自分は2割の少数派になってしまうのか、と焦るのは無理もない。

 そのうえ、10月の消費税率引き上げから9カ月限定で、中小店舗でキャッシュレス決済した場合は5%を、コンビニなどフランチャイズの店舗では2%を、消費者に還元すると決まっている。むろん、これも経済産業省のキャッシュレス推進策の一環で、それに合わせて、キャッシュレス決済事業者が100社以上も経産省に仮登録を申請、なんてニュースも流れるものだから、自分もキャッシュレスにしなきゃ大損する、時代から取り残される――。そうやって焦燥に駆られる人も急増しているのだ。

 では、実際のところ、キャッシュレスに乗り遅れないほうがいいのか。焦る人を前に結論を先延ばしするのも無粋なので、ひとまず先に述べておくが、バスに乗る必要はまったくない。

 さて、ひと口にキャッシュレスといっても、

「大きく分けてクレジットカード、電子マネー、スマートフォンを使ったQRコード決済の三つがある。最近乱立しているのが、ソフトバンクとヤフーが運営し、昨年12月、“100億円キャンペーン”を行った“ペイペイ”、続いて“20%還元キャンペーン”を行っている“LINEペイ”などのQRコード決済です」

 と岩田氏。これは、四角いモザイク状のQRコードをスマホで読み取ったりして決済する方式で、今後のキャッシュレス決済の中核をなすと見られている。今回は、主にスマホを使ったこの決済の“善し悪し”を検証する。

 ところで、いまキャンペーンについて話に挙がったので、どんなものであったか確認しておくと、

「“100億円キャンペーン”はペイペイで決済した消費者に、決済額の20%のポイントを還元し、さらに抽選で決済額を全額無料にするというもの。還元額が100億円に達したら終了する予定でしたが、実際にはテレビやSNSで話題になって、わずか10日で終了してしまいました」(同)

 ペイペイにとって大きな宣伝になり、現在、第2弾を実施中だが、岩田氏は、

「効果は絶大でしたが、必ずしも成功とはいえない」

 と言って、続ける。

「4カ月と謳いながら10日で終了したことで、消費者に不信感を与えたのではないでしょうか。100億円をばら撒くというやり方は、ギャンブル的な臭いもし、不愉快に感じた人も多かったと思います」

 しかも昨年末、キャンペーンが終わるやいなや、ペイペイの不正使用の報告が相次ぎ、「100万円利用された」という人も出現。闇サイトでクレジットカード番号などを入手されてしまうと、簡単に不正使用されるというリスクが浮き彫りになったのである。

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