上野千鶴子の東大「性差別」祝辞を元東大総長らはどう聞いたのか

社会 週刊新潮 2019年4月25日号掲載

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トレンド入り

 この上野名誉教授の祝辞がメディアで報じられると、ネット上では賛否両論が巻き起こった。その結果、ツイッターでは、「上野千鶴子」というキーワードがトレンド入りするほど。

 その書き込みを見てみると、例えば、

〈上野千鶴子さんの東大祝辞。思わず涙が溢れてきた。女性に求められる「かわいい」に苦しめられ、それに適応しようと頑張った結果自分を見失ってたなあと〉

〈私は単純にかっこいいと思ったよ。あえて、言葉にしたことに意味があると思う。日本にもこういう人が居たんだなって、嬉しくなった。まだまだ、捨てたもんじゃないじゃん日本!!って〉

 と、絶賛するものから、

〈大学の入学式すらイデオロギーの道具にするか〉

〈何が言いたいの? 男女平等、女性は不利とか、祝辞に言わなくちゃならないの? 上野千鶴子の持論を祝辞で言わないで欲しい。男女平等訴えるなら、国会議員にでもなって、世論に訴えればいい。場違いな祝辞〉

 などの批判的なものまで、議論は沸騰中である。

 少なくとも、東大入学式の祝辞がこれほど世間の関心を集めたのは前代未聞に違いない。

 では、上野名誉教授のかつての「上司」、東大の小宮山宏元総長(2005年~09年)は、彼女の祝辞をどのように聞いたか。

「本当に素晴らしい祝辞でした。そもそも、世の中には、男と女が半分ずついるわけです。そして、昔のように男が外で働いて、女が家事をするという時代ではなくなりました。女性も社会のなかで働き、自身の役割を果たしたいと考える人が増えるのは当然のことです」

 だが、日本では女性の社会進出が世界に比べて、立ち遅れているという。

「3年前、ヒラリー・クリントンが女性初の米国大統領候補になったとき、女性が出世するには打ち破れない壁があるという意味で“ガラスの天井”という言葉を遣いました。結果的に、彼女は大統領にはなれませんでしたが、“ガラスの天井”に大きなヒビを入れたのは間違いない。また、ヨーロッパでは、閣僚の半数以上が女性という国が少なくありません。翻って、日本はどうですか。男女平等という分野において、本当に進歩していないのです」(同)

 2015年、国連でSDGsなる「持続可能な開発目標」が採択され、そのうち、日本が圧倒的に低い評価なのが「ジェンダー問題」なのだという。

「だからこそ、上野先生はあえて、そのジェンダー問題を入学式で取り上げたのではないでしょうか。やはり、これまで受験勉強にばかり没頭していた新入生がハッとするようなことを言わなければ意味がありません。そういう面からも、上野先生の祝辞は出色ではなかったかと思います」(同)

 実際、東大にはあからさまな性差別があるのか。

『ルポ東大女子』の著書もある教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏によれば、

「東大の女子学生は男子学生を立てるために、学内ではバカなふりをすることもあるそうです。何か議論になったときも、やはり東大にはプライドの高い男子が多いわけです。もし、論破したとしても、後々、面倒くさい。ですから、彼女たちは、議論をしていても途中で折れてバカなふりをすると言っていました」

 上野名誉教授の祝辞は、女子学生に「あなたたちだって“弱者”の側にまわることもあるのよ」と当事者意識を持たせるものだったという。

「世の中には女性差別に限らず、自分の力だけではどうしようもないことや不条理があることを気づかせようとしている。それは、現代社会で足りていない視点です。そこにスポットを当てた画期的な祝辞だと言えます」(同)

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