追悼・萩原健一さん「前略おふくろ様」にまつわる強烈なエピソード

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安藤昇と岩城滉一

「第2シリーズでは安藤昇さんに出演していただいたんですよ。安藤昇本人役としてではなく、役者として。自殺する中小企業のオヤジの役です。これがすごく良かった」

 本物のヤクザだった安藤昇は、60~70年代にかけて多くのヤクザ映画に出演していた。

「それで撮影が終わったとき、安藤さんに“お時間ありますか”って誘われて、渋谷でお茶を飲んだんです。すると“うちに若い衆がひとりいるんですが、会ってやってくれませんか”って。そしてすぐ駆けつけてきたのが岩城(滉一)だった。

 物おじしないし面白い。安藤さんが“こいつを『前略』に出してやってくれませんか”って言うんで、急遽、最終回にシーンを書き加えて登場させたんです。そしたらたちまちショーケンと衝突した。

 要するに、岩城から見るとショーケンは“ハンパ”だって言うんですよ。人間として。“不良ぶってるけどハンパで、不良のフリをしてるだけだ。その点、オレはちゃんとしたフリオです”。それで僕が面白がって“明るいフリオだ”って命名した。あいつ、すぐカッとなるんだけど、謝るべきところは謝るし、筋を通すしね。だけどショーケンはショーケンで岩城に屈しなかったですよ」

 岩城は高倉健が主演した「あにき」(77年、TBS系)にも出ている。

「面白いやつだから、レギュラーで出したんです。ところがその後、岩城がとっ捕まっちゃった。容疑は覚せい剤取締法違反と銃刀法違反(拳銃所持)。

 それでまあ、岩城は完全に干されるわけですよ。何年かして、フジテレビで『北の国から』をやる時に岩城を出演させることを条件に引き受けた」

 なるほど、“草太兄ちゃん”は復帰作だったのだ。

「そうです。岩城以外にも、覚醒剤で捕まった室田(日出男)は『祭が終ったとき』(79年、テレビ朝日系)で復帰させましたしね。

 またあの頃は僕の周りがやたらと覚醒剤や大麻で捕まったんですよ。それで某夕刊紙に“北海道在住の某有名脚本家が大麻を栽培して仲間に流してる”なんて書かれたこともありましたね(笑い)」

 ***

 強い個性が名作を輝かせていた時代の話である。

デイリー新潮編集部

2019年3月31日掲載

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