昨年最下位の「阪神」、順位予想が“1番当たる”と評判の野球評論家が今年を占う

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投手陣の“不安”

 ここで阪神投手陣のうち、昨季の勝ち星をランキング形式で並べてみることにする。先発とセットアッパーの区別は付けずに並べてみた。

 一般的に先発ローテーションの枠は6人とされる。それを踏まえ、表は勝ち数の上位7人を収録した。その7位に藤浪が入るところが、彼の苦境を鮮明に浮かび上がらせる。

 広島の大瀬良大地(27)は昨季、15勝をマークした。もし藤浪が同じ勝ち星に恵まれ、メッセンジャー(37)との2枚看板として先発ローテーションを支えたなら、優勝争いに食い込んだ可能性もある。少なくとも6位という屈辱的な順位でシーズンが終わることはなかっただろう。

「今季の阪神で不安材料の1つが先発です。まず、藤浪の不調が痛いことは言うまでもありません。そのことはフロントも痛感しており、中日と契約交渉が決裂したガルシア(29)と、オリックスで国内FAを行使した西勇輝(28)の両投手を獲得しました。この2人にメッセンジャーを加えて“3本柱”となることが期待されているわけです。移籍してきた2人には実力があるとはいえ、やはり彼らはシーズンが始まらないことには、なかなか戦力になるか計算できないものです」

 野球は投手陣が相手をゼロに抑えていれば、少なくとも負けることはない。だが表からは――たとえメッセンジャーとガルシア、西の三本柱が機能したとしても――投手の選手層が決して厚くはないことが分かる。藤浪が復活し、才能を高く評価されている小野泰己(24)が著しく成長したりすれば、状況は一変するわけだが……。

「打撃陣は、ベテラン福留孝介(41)の仕上がりが抜群です。今季は大暴れするのではないかと期待していますが、他は未知数と言わざるを得ません。特に糸原健斗(26)、大山悠輔(24)、木浪聖也(24)の若手3人がチームの中核を担うよう求められており、それ自体は楽しみではあります。とはいえ、『試合で使いながら育てる』ことが必要な3人であるのは言うまでもありません。“隙のない、優勝を狙えるチーム”という状態からは遠いと言わざるを得ないでしょう」

 阪神のオープン戦は5勝11敗の11位。12位は日ハムのため、セ・リーグでは最下位となる。一方、昨季の日本シリーズを戦った広島とソフトバンクは1位と2位。隙のない強さを見せつけた。

 結局のところ阪神は、投手も打者もチーム全体として層が厚くない。ファンにとっては少なくとも、この先数年は忍耐の時期が続くと覚悟したほうがよさそうだ。

「キャンプやオープン戦を見ていますと、矢野燿大・新監督(50)が『自分の独自色があるチームを作ろう』と躍起になっているのが伝わってきます。矢野さんの前のめりの姿勢を、私は評価したいですね。まず、昨季の最下位のショックを建て直すことで、今季は精一杯でしょう。苦闘しながら、若手を育てていく矢野監督をファンが温かく見守れば、数年後には優勝を狙えるチームになっても、全く不思議はないと思います」

 阪神ファンの合い言葉は「臥薪嘗胆」だろう。彼らは1965年から84年までの“優勝なし”を耐え抜いた。2~3年低迷したとしても、人気が凋落することもないはずだ。

週刊新潮 2019年3月29日掲載

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