「三菱UFJ銀行」兵庫県芦屋市などの“金庫番”返上で全国の自治体が大ピンチ

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手数料ゼロ

 先の行員が過去形で話すように、指定金融機関は今や旨味のあるものではないという。関西に本店を置く地銀の幹部が現状をこう解説する。

「県庁内に銀行の“特別出張所”を設置し、そこでは大量の公金収納や支払事務を行っています。ですが、利益が出るどころか大赤字。普通なら数百円かかる口座振替手数料は、税や公金の場合はほとんど無料なのです。そこで特別出張所には正規行員でなく、OBやOGなどをパートで置いて人件費を抑えています」

 全国地方銀行協会は、数年前から全国知事会などに手数料の値上げを盛り込んだ要望書を提出していた。また、全国銀行協会も事務負担軽減を目的に、

「全銀協は、地銀協や第二地銀協、信託協会などと連名で、4年前から毎年“税・公金の電子納付推進”の要望書を提出しています」(全銀協広報室)

 これが思うように進まないうえに、日銀によるマイナス金利政策でさらに赤字が拡大したともいう。

「マイナス金利で貸出金の利ザヤが稼げず、地銀の半数が本業では赤字に転落している。目ぼしい運用先もなく、地方自治体の預金は今や足枷でしかありません。このままでは経営基盤にも悪影響を及ぼしかねず、今後は地方自治体に手数料の値上げを飲んでもらうか、三菱UFJ銀行に倣って返上も視野に入れなければならないでしょう」(先の地銀幹部)

 経済ジャーナリストの福山清人氏がこう占う。

「今後、“金庫番”返上の動きは拡大すると思います。メガバンクや地銀が逃げ出せば、第二地銀や信用金庫にお鉢が回ってきますが、彼らに十分な対応ができるとは思えない。最終的に地方自治体が泣きつく先はゆうちょ銀行。ただし、現行ではゆうちょ銀行は、法人融資を禁じられているので取引に制限がある。そんな旨味のない“金庫番”を受けるかどうかは疑問です」

 金融機関が軒並み逃げ出せば、全国の自治体は大ピンチに直面するのだ。

週刊新潮 2019年3月21日号掲載

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