再審確定の湖東病院事件 取調べ捜査官への恋慕が招いた獄中生活12年の悲劇

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優しさに魅かれ

 当初、滋賀県警の見立ては「アラームが鳴っていたはず」だった。西山さんは「『鳴ってなかった』と言うと、刑事さんに『そんなはずはない、嘘つくな』と凄まれて怖かった。でも『鳴っていた』と認めると、急に優しくなった」と振り返る。そして取り調べを担当した、当時、巡査部長だった山本誠という男は「殺人罪でも執行猶予で刑務所に入らないでいいこともある」とか、西山さんの拘置所での規律違反について「私が処分を取り消してあげる」などと優しく持ち掛けた。「飴と鞭」は取り調べの常道だが、悲しいかな、西山さんは勘違いをして彼に魅かれてしまう。

 鑑定医は「酸欠による窒息死」とした。だがこの医師は、警察から「呼吸器が外れていた」との情報を得て鑑定書を作っており、信憑性は低い。弁護団は「植物人間状態だった男性はカリウム値が異常に低く、致死性不整脈で病死した可能性が高い」とした。

 要は、単なる自然死だったのだ。井戸弁護士は「事件でも事故でもない。なかった犯罪を警察と検察がでっち上げた」と断言する。

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