「QBハウス」は1200円カットでも売上増!? 値上げで赤字転落「鳥貴族」との違い

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初の赤字となった鳥貴族

 QBが口をつぐむワケを、加谷氏はこう見る。

「ひとつには、昨年3月に東証1部に上場したQBの株主にあると思います。同社の株主構成を見てみると、投資ファンドが占める割合が大きいことがわかります。QBとしては、値上げにあたっての投資家の反応がものすごく気になるわけです。だから、楽観的であろうと悲観的であろうと、何かしら会社の考えをメディアに答えれば、株価に影響してしまう。だから慎重になるわけです。もうひとつの理由には、値上げについての見解を明かせば、それが出店戦略に結びついてしまうからです。『値上げはまったく影響ない』というのならば、他社の1000円カットが出店している地域にも進出するということになる。『お客様は値上げに敏感です』といった反応を示せば、今後は出店ペースを落とすと分析され、他社を勢いづかせてしまうかもしれない。ですから、『答えられない』ということになるのです」

 QBの株価を簡単に説明すると、値上げを発表した昨年8月13日時点で1993円だった株価は、その後上下を繰り返し、昨年12月26日には1693円にまで下がった。それが2月1日の値上げ以降は、3月18日現在まで、右肩上がりを続けて2184円をつけている。

 なぜ、値上げをしてもQBにダメージはなかったのだろうか。たとえば焼き鳥チェーン「鳥貴族」は、人件費の高騰などを理由に、17年10月にそれまでの「全品280円」から「298円」への値上げ(税別)を行った。そしてこの3月8日に発表されたのが、“東証1部上場後はじめての赤字”という結果である。〈価格改定を2017年10月に実施したこと等から客数が減少し店舗の収益力が低下するという結果となりました〉という同社の報告書にはあるが、こちらはシンプルで分かりやすい。先の加谷氏が続ける。

「モノやサービスは、値段が売り上げに影響しますが、その影響度合いはモノやサービスの種類によって異なります。例えば、シャンプーのような生活消費財が2割値上げすれば、同じ商品を使い続けようとする人は減り、他のシャンプー商品を買います。あるいは、飲食店である牛丼チェーンを考えて頂けると分かりやすいかもしれません。こちらも値上げすれば他の牛丼チェーンに客足は移りますし、そもそも牛丼以外のコンビニ弁当やファストフードにもゆく可能性があります。つまり選択肢は他があるわけです」

 居酒屋である鳥貴族にも、この法則はあてはまるだろう。一方「QBハウス」はヘアカットというサービスだが、

「まず、飲食店と違って、QBは月1~2回と利用するペースが低い。加えて、同じエリアに1000円カットがそう多くあるわけではありませんから、値上げしたところで、飲食店のような“他”がない。4つ先の駅に1000円の床屋があっても、わざわざ行こうとは思わないでしょう。ヘアカットは、一度行った店へ再び行く『経路依存性』が強いサービスでもあります。そのあたりはQBも分かっているからこそ、1200円に値上げしたのだと推測します」

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