“アイコスなんて爆発すればいい!” 嫌煙過激派の「学術総会」潜入記

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「体臭条例」はないのに…

 この発言が飛び出したのは、〈千葉から創る「タバコゼロ社会」〉と銘打たれた会でのこと。先月24日、千葉市で日本禁煙推進医師歯科医師連盟なる団体の学術総会が開かれ、その前日にも記念シンポジウムや講演、懇親会が行われた。

「その名の通り、日本禁煙推進医師歯科医師連盟は禁煙を絶対正義とする団体です」(前出関係者)

 当然、彼らは加熱式もターゲットにしていて、その会に“潜入”した出席者によれば、ある講演者は、

「加熱式タバコを吸っている人は(タバコ会社側に)騙されている」

 とした上で、こんなことを言っていたという。

「加熱式タバコに完全に切り替えた人の中には、自分は“プレミアム喫煙者”であり、紙巻きタバコを吸っている人とはちょっと違うというプライドや優越感を持っている人もいる。そうした心をあまり傷つけないように、ちょっと持ち上げながら真実を伝えていく」

 加熱式愛好家はリテラシーが低く、裸の王様――さもそう言いたげなセリフで、加熱式スモーカーを小バカにし、それこそ喫煙者に対する優越感が滲み出ている感が拭えないが、別の講演者も負けていなかった。

「(千葉県)柏市の北のほうは、ここはもうタワマンもあって、両親が喫煙しないのが当たり前。最近はLGBTに配慮した中学校のニュースもあった。かたや南柏のほうは田んぼがあって農村地域で、同じ市の中でも全然地域性が違う」

 タワマンが建っている都市部の“洗練された”住人は進んでいるので禁煙やLGBTへの理解も進んでいるが、田舎の“泥臭い”人たちの意識は遅れているとでも言いたかったのだろうか。そこに田舎への差別意識が含まれていないことを願うばかりだが、加熱式に話を戻すと、何としてでも規制したいという「願望」が先走ったらしく、こんな話をする人もいたという。

「加熱式タバコに関しては、エビデンスがないと条例を制定するのは難しい。加熱式タバコの成分がどうだとか、疫学的に死亡率がどうだとか、そういうところ以前に、加熱式タバコのにおいによって苦痛を感じるというデータをしっかり出していただく必要がある」

 神奈川県の受動喫煙防止条例の制定に携わった、東海大学の玉巻弘光名誉教授は次のように警鐘を鳴らす。

「受動喫煙を法律や条例で防止するのは、それが法規制を要する程度の他者の健康に対する侵害行為に当たるとの考え方に基づいています。果たして、においはこれに該当するといえるでしょうか。飲酒後のアルコール臭や香水臭、体臭を条例で取り締まることなど考えられないでしょう。しかし、ことタバコに関した話になると、こうした議論が罷(まか)り通ってしまうのはおかしいと思います」

 昨年、東京都で受動喫煙防止条例が成立し、大阪府議会でもこの2月定例会に同様の条例案が上程され、現在、競うように国の規制より厳しい「タバコ条例」の制定が進められている。しかし、「口臭条例」や「体臭条例」制定の動きは聞いたことがない。にも拘(かかわ)らず、なぜ対喫煙者にだけ「におい差別」が許されるのだろうか。我こそが、我らだけが正しいと妄信する者たちの暴走――。

「正義臭」が鼻につく。

週刊新潮 2019年3月14日号掲載

特集「ターゲットは『加熱式』! 『嫌煙過激派』が怪気炎を吐いた『学術総会』潜入記」より

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