NHKが画策する「ネット同時配信」の狙い 民放大反発で“見切り”発車の声

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見切り発車の同時視聴

 その上、NHKの同時放送には“見切り発車”との指摘もある。ニュースサイト「BLOGOS」に「リスク高く茨の道を歩みそうなNHKの常時同時配信」(3月6日配信)を寄せた芸能ジャーナリストの渡邉裕二氏はいう。

「サービス開始にあたっての整備をどうするのか、という点が見えてきません。今のところNHKは、受信契約者にID(視聴者番号)とパスワードを与え、それでネット視聴もできるようにするとしています。では、受信料を払っているひと家庭に、いくつIDを与えるのか。世帯あたりで何人がネット視聴を利用できるようにするのか、そのあたりをまったく決めていないようなのです。当然、IDをどう管理するのかも未定。たとえばIDがメルカリで売られたらどうするのか、そういった対策も講じる必要が出てくるでしょう」

 渡邉氏は、そもそもネットでNHKが観られることの需要にも疑問を呈する。

「いまや、自宅のレコーダーで録画して、出先でもスマホで番組を観ることができる時代です。果たして、テレビを生で観たいという人がどれだけいるのか。せいぜい、スポーツと緊急時のニュースくらいでは。前者を考えれば、たしかに、東京五輪に合わせて同時接続を始めるというNHK戦略は理にかなっています。が、後者に関しては、緊急時にはIDやパスワードなしでもネット視聴ができるようになるといいます。受信料の縛りに、ますます意味がなくなります」

 NHKは、民放5局が始めたネット無料配信サービス「Tver」にも参加することを明らかにしている。基本的に同じネット配信なのに、こちらはタダで、あちらは受信料契約があると観られる……。棲み分けもややこしくなりそうだ。

 民放から大反発を受け、コストだってかかる。どれだけ需要があるかも怪しい。それなのになぜ、NHKは「同時配信」したいのか。

「家庭の固定電話が辿る道と同じで、将来的にテレビでの受信料徴収が見込めなくなる。将来的に、スマホやPC視聴からも徴収できるようにするための布石でしょう。放送法上、今のところはスマホを持っているだけで受信料、とはなりませんが、今後はどうなるか。これまでは『テレビ持っていません』、あるいは『(ワンセグ機能のない)iPhoneです』もありえましたが、いまの時代、『ネット使ってません』はまずない。スマホを買う時に、強制的にNHKの受信契約を結ばせられる……なんて未来もあるかもしれませんよ」(先の局関係者)

 テレビとネット、そして“その先”をNHKは同時に視ている――?

週刊新潮WEB取材班

2019年3月14日掲載

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