桜田五輪相「がっかり発言」で考える“切り取り報道”の罪 TV番組制作スタッフの本音

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テレビ局も「全文公開」を検討

 次は「下火」の部分だ。

《いやあ、日本が誇るべきスポーツの選手だと思いますよね。われわれがほんとに誇りとするものなので。最近水泳が非常に盛り上がっているときでもありますし、オリンピック担当大臣としては、オリンピックで水泳の部分をね、非常に期待している部分があるんですよね。一人リードする選手がいると、みんなその人につられてね、全体が盛り上がりますからね。そういった盛り上がりがね、若干下火にならないかなと思って、ちょっと心配していますよね。ですから、われわれも一生懸命頑張って、いろんな環境整備をやりますけど。とにかく治療に専念して、元気な姿を見せていただいて、また、スポーツ界の花形として、頑張っていただきたいというのが私の考えですね》

 全文を読んだ後、どのような感想を持たれただろうか。「やはりマスコミの編集はおかしい」と疑問視される方も、「全文を読んでも、『がっかり』と『下火』の表現は適切ではない」と判断される方も、同じくらいおられるのかもしれない。

 だが、民放キー局の制作スタッフは、「個人的な意見としては、特にテレビニュースは、問題のある編集だったと考えています」と明かす。

「乱暴で誤解を招く編集だった、と言われても仕方ないでしょう。なぜ、あんなことが起きたのかといえば、一番の理由は時間です。特に夕方のニュースは、非常に短い時間で、できる限り多くのニュースを報じる必要があります。『がっかり』の前後を伝える尺がなく、そこだけを切り取ったり、ナレーションで処理してしまったりするのです。民放はもちろん、NHKも例外ではありません」

 これが朝の情報ワイドショーの場合、大きなニュースは“1つのコーナー”として相当な時間が与えられる。こうした時は、夕方のニュースより長い引用が可能だという。

「にもかかわらず、ワイドショーが乱暴にコメントを切り取ることも珍しくありません。これは編集担当のセンスに問題があるからです。『ここはカットしていいだろう』という安易な判断が、ミスリードを招く。あってはならないことですが、テレビの現場では決して珍しいことではありません」(同・制作スタッフ)

 この制作スタッフは、「堀江さんや村本さんの批判は確かに一理あります」と打ち明ける。

「実際、全文を公開しても、『がっかり』や『下火』に違和感を覚える視聴者は、決して少なくなかったと思います。一方で『言葉の使い方を間違えただけで、全文を読めば、桜田大臣は池江さんを批判する意図はなかった』と擁護する人も多かったはずです。それが、発言の一部を切り取った編集で、批判派ばかりになってしまった。テレビ局は桜田大臣の発言を正確に報じ、視聴者の皆さんが考える契機にしてほしかった。が、荒っぽい編集が混乱を巻き起こしてしまったのです」

 テレビ局によるVTRの編集が問題視されることが増えてきた。キー局側も改善策を考えており、「全文紹介」の検討が始まっているという。

「最近、新聞記事やSNSの書き込みを報道番組やワイドショーが紹介する際、全文を映したり、読み上げたりすることが主流になってきました。これはミスリードを防ぐという意味で、とても価値ある取り組みだと思います。あおり運転や教師の体罰を撮影した動画などにも、類似の問題が起きることがあります。動画のノーカット配信も検討が始まっており、今後は“編集をできるだけしない”で放送するのが主流になっていくと思います」

 正直言って今回の問題は、桜田大臣がボキャブラリーの乏しい人物であることを露呈したということに尽きる。しっかりとした報道を期待したい。

週刊新潮WEB取材班

2019年2月18日掲載

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