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組織的に無能な野党

 もちろん疑惑があればそれに対して真摯に説明する義務が政権にあることは言うまでもありませんが、同時に国政の課題を処理してもらわなければならないのも当たり前で、それを両立させるべく与野党が協力して日程を組むのが本来の議会政治のあり方でしょう。他にも、本来は審議の2日前までに提出することになっている国会への質問を前日の深夜まで留保して、官僚に徹夜を強いるような嫌がらせをすることは日常茶飯事です。

 このようにはっきり言って日本の国会では非生産的で不毛な議論が連日行われているのですが、ただ野党の立場に立つとこれも仕方のない側面があります。たとえまともな政策議論をしようとしても、政権側が事前に与党と法律案・予算案の内容をガチガチに固めてしまっており、予算額の1円、法律案の一言一句の修正にすら応じる意向がないことがほとんどですから、有ること無いこと騒ぎ立てて世間の政権への不信を煽って政権批判票を掘り起こす方が次の選挙に向けては有効な時間の使い方ということになります。もちろんそういう中でも政府に対して健気に建設的な政策提案をしてくるような良識的な野党議員もいますが、残念ながらそのような議員が野党の主流になることはありません。むしろ虚実問わず政府を批判一辺倒で追いつめるようなタイプの議員の方が出世することになります。

 かくして日本の野党は、政策立案にあたって建設的な役割を果たすことが政権・与党によって封じられているため、その瞬間瞬間の世論にのって刹那的に政権批判を繰り返すことくらいしかできない宿命にあります。その意味では日本の野党は与党に無能であることを強いられている、ということができると思います。これは重要なことで、野党議員の中には大変優秀な方がたくさんいますが、それとは関係なく日本の野党は組織的に無能にならざるを得ないのです。これは大変残念なことです。

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 元官僚である宇佐美氏は同書で、「社会保障の先送り課題」や「迫り来る安全保障の危機」の現状を解説し、このままでは日本のさまざまなシステムは2036年には崩壊する、と警鐘を鳴らしている。ただし、その被害者となる世代はいま国会にはほとんどいない。

 こうした問題を可視化して、さらに議論を深めることが与野党問わず政治家に求められている役割のはずだが、現在の国会中継を見て、そういう期待を持てる国民はどのくらいいるのだろう。

デイリー新潮編集部

2019年2月13日掲載

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