冬ドラマは“司法モノ”が多すぎて食傷気味? 民放プライムタイムの全14本中10本を採点

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弁護士モノ3本

●「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」(フジ系/木・夜10時)★☆☆☆☆
これは弁護士モノではない。世論を捻じ曲げることを生業とする“スピン・ドクター”モノ。スピン・ドクター(情報操作のプロ)が弁護士である必要性は低いのに、わざわざ弁護士に仕立てたことからよくわかるとおり、もう弁護士モノの水脈は枯れてきてる。

●「イノセンス 冤罪弁護士」(日テレ系/土・10時)★☆☆☆☆
これは「土曜ドラマ」ではない。ジャニーズが出ていない。ジャニーズ以外の大手事務所の顔を立てること、空いてる1時間を埋めることの2点のみが存在意義に思えてならないドラマ、という意味では、これは同じ日テレの「新日曜ドラマ」である。今期の商品が弁護士モノあるいは捜査モノになった理由は、女子高生がiPhoneを買う理由と同じで、「特に考えてないから」。たぶん。

●「グッドワイフ」(TBS系/日・夜9時)★★★☆☆
これは弁護士モノではない。ヨコをタテに置き換えてはいるけれど、根は米国産の“ロイヤー”モノ(ニッポンの弁護士とアメリカのロイヤーは、まだまだ相当違う)。昨年10~12月期のフジ系・月9の「SUITS/スーツ」もアメリカのロイヤー・ドラマのリメイクだったことを思い出すと、ニッポンでは弁護士モノのネタも土壌も薄いことが再確認できる。ただ、国産連ドラとしての出来は「グッドワイフ」のほうが数段上。

 ……と、いきなり何の話かと言えば、今シーズンの連ドラ、いくらなんでもちょっと偏りすぎてやしませんか? という話。さっきズラリ並べた10本のうち、「トレース」から「3年A組」までのの7本が捜査モノ、「QUEEN」から「グッドワイフ」までの3本が弁護士モノとなるもんでね。

 去年の10~12月期も捜査モノが「相棒」「科捜研の女18」「駐在刑事」「ドロ刑―警視庁捜査三課―」の4本、弁護士モノが「SUITS/スーツ」「リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~」の2本と目立っていたけれど、今度のクールはそれ以上の乱立ぶり。

 ま、今期の捜査モノのうち「後妻業」と「3年A組」については、皆様から異論が出るでしょう。木村佳乃演じる毒婦がカネ目当てでくわえ込んだ夫たちを次々……という「後妻業」は犯罪モノだし、菅田将暉演じる毒教師がナニ目当てなのかわからないまま、監禁した生徒たちを次々……という「3年A組」は学園モノ・ミステリーモノだろう、と。

 お説ごもっとも。ただ、「後妻業」なら大阪府警の元デカの探偵=伊原剛志が毒婦を追いつめていく筋立てだったり、「3年A組」なら本庁捜査一課の大友康平と所轄の椎名桔平が毒教師の裏を探っていく流れだったりで、いずれにも捜査モノの側面あり。

 同じようなことは、弁護士モノ3本中の2本についても言えます。「イノセンス」は検察を敵に回して過去の冤罪事件を調べ直す弁護士=坂口健太郎たちの話だし、「グッドワイフ」だってシリーズ通しての物語の軸に、収賄容疑で逮捕された検察官の夫の嫌疑を弁護士の常盤貴子たちが晴らそうとする流れがあって、つまりはいずれも広義の捜査モノ。ゆえに今期、捜査ネタ連ドラは9本あるとも言えます。

 話にはさらに先があって、弁護士モノの残る1本である「QUEEN」、これは主演の竹内結子が世論操作でクライアントを醜聞から守る弁護士。刑事事件がメインとはならなそうだから捜査モノとは言い難いけれど、法律モノ・司法モノであることは間違いない。そして、この司法モノというレベルにまで枠を拡げると、そこには捜査モノまですっぽり収まってくる。

 結局のところ、今シーズンの民放プライム帯の連ドラ全14本のうち実に10本が司法モノという勘定になるし、司法色やや薄めの「後妻業」「3年A組」あたりを除外したとしても刑事モノと弁護士モノが合わせて8本。柳の下でのドジョウの養殖、はかどりすぎだろう。

 これ以上グダグダ言っても仕方がないので、あと4文字で終わりにします──飽きた。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

週刊新潮WEB取材班

2019年2月11日掲載

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