サウジ戦の会見、中東記者から「日本は力を出せなかった」の質問に森保監督は……

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中東記者は「なぜ、日本が勝ったのか?」と質問

 森保監督は「少し守る時間が長かった部分はありますけど」と劣勢の場面が少なくなかったのは認めた。だが、あくまでも選手に賛辞を送り続けた。

「逆にこれまで攻撃的に試合を進めていく部分でやってきたところで、選手たちは粘り強く無失点に抑えながら戦っていけるという、それを試合の戦い方のオプションの一つとしてできたことをポジティブにとらえたい。あとセットプレーのところはキッカーがいいボールを蹴って、なかの選手の入り方も良かった。そんなところで勘弁してください」

 次の質問が「ラストクエスチョン」と会見をコントロールするベニュー(会場)責任者が告げると、中東の記者が日本の勝因について質問した。

「今日の試合、サウジアラビアはいいプレーを見せていた時間帯もあったと思うけれど、しかしながら得点したのは、そして試合に勝利したのは日本でした。戦術的にこの試合に勝つためのポイントは何だったんでしょうか」

 それに対する森保監督の答はつぎのようなものである。

「勝ち上がるポイントですが、サウジアラビアは攻守ともアグレッシブで、いいチームだということは何度も話していますが、そこは試合前から選手にも話しはしたし、選手には『これまで以上に厳しい戦いになる』ということは覚悟して臨みました。勝負をわけたポイントとしては、サウジアラビアは先に失点することは考えていなかっただろうし、我々もそう考えていて、そのなかで我々は先にセットプレーから取ったということで、サウジアラビアは攻撃の圧力をかけてくる。そして我々は守備の時間が長くなるというところ、本来であれば両方のチームはボールを握って試合を展開したいというのが両チームの狙いだったと思いますが、試合の流れのなかで、展開のなかで臨機応変に試合の流れに対応するというところで日本はできたので、勝利できたのだと思っています」

 公式記者会見は25分ほどだったが、通訳する時間も含まれるため、そう多くの質問が出たわけではない。

 ウズベキスタン戦の翌日の18日は、日本人記者を相手に森保監督はブリーフィングを行ったが、こちらは公式会見と違いフランクな意見交換だった。やはり公式な会見となると、森保監督もまだ試合が続くため、そう簡単に本音は漏らさないことは想像に難くない。

 サウジの猛攻に日本は耐える展開だったが、それこそが森保監督の狙いだったのではないかと考えている。

 これまでのサウジは守備を固めてのカウンターが最大の武器だった。しかしアルゼンチン人のフアン・アントニオ・ピッツィ監督は、サウジをボールポゼッションのチームにモデルチェンジした。

 彼らの変貌ぶりと卓越した個人技は驚異的ではあったものの、対戦相手を押し込むプレースタイルは、逆に長友佑都が「スピードモンスター」と呼んだエースストライカーのアル・ムワラッドからドリブル突破するスペースを奪ったような気がする。

 日本にとって一番警戒すべきは、ウズベキスタン戦のような失点パターンである。そこで森保監督は、あえてサウジの変貌を逆手に取り、自陣に引いて相手を呼び込むことでスペースを消したのではないか。今大会が終わったら是非とも聞いてみたいと思っている。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

2019年1月23日掲載

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