〈鼎談〉ケニー・オメガ×マキシマムザ亮君×糸井重里 第8回 これからのふたり。

スポーツ

  • ブックマーク

Advertisement

 平成の終わりを目前に、みなさんはどんな「忘れられない記憶」をお持ちだろうか? 

 新日本プロレスの現IWGPヘビー級チャンピオン(2019年1月1日現在)のケニー・オメガ選手と、ロックバンド「マキシマム ザ ホルモン」のマキシマムザ亮君さんが揃って挙げるのは、平成元年に任天堂より発売された伝説のRPGゲーム『MOTHER』。いまもなおカルト的な人気を誇るシリーズのゲームデザインを手がけたのは、コピーライターの糸井重里さん。

 プロレスラーとして、ミュージシャンとして、『MOTHER』の世界観に強い影響を受け続けてきたというお2人が、30年越しの想いを抱えて糸井さんと初対面! ひとつのゲームを語るうちに蘇る、平成を駆け抜けてきたそれぞれの葛藤、そして勇気。

 2018年12月に「ほぼ日刊イトイ新聞」で企画・掲載されたこの異色の座談会(全8回)を、お正月スペシャルということで特別に「デイリー新潮」からもお届けします! では第8回〈これからのふたり。〉 お楽しみください。

 ***

糸井:そろそろお時間のようなので、最後はおふたりのこれからのことを聞いて終わりにしましょうか。ケニーさんがいるかぎり、日本のプロレスはもっとおもしろくなるんですよね?

ケニー:おもしろくなると思います。というか、私、チャンピオンだから、じぶんで言うのは恥ずかしい(笑)。

糸井:じゃあ、代わりに燃え殻さんに言ってもらいましょうか。燃え殻さんは、いまも熱心にプロレスを見に行ってるんですよね?

燃え殻:はい、行きます。ケニーさんの近況でいうと、来年1月4日の「レッスルキングダム」という1年でいちばん盛り上がるイベントで、ケニーさんと同じくらい実力、人気のある棚橋弘至さんとのビッグマッチがあります。歴史に残る名試合になると思います。

ケニー:がんばります。

糸井:燃え殻さんに聞きたいんだけど、いまのプロレスってどういうところがおもしろいの? 昔のアントニオ猪木さんたちのときとは、たのしみ方がちょっとちがってきてますよね。

燃え殻:ああ、そうだと思います。いまの新日本プロレスって、いろいろなチームがあるんですが、それぞれが「つぶし合い」じゃなくて「光らせ合い」をするんです。

糸井:あぁ。

燃え殻:これまでのプロレスって、個性や派閥のぶつかり合いだから「遺恨」ばかりだったんです。でも、いまはもっと重層な物語があって、ただのつぶし合いじゃなくて、相手によって光り方が変わってきます。ケニーさん自身もこれまでいろんな道をたどってきていて、ベビーフェイス(善玉)のままじゃなく、ヒールなんだけどお客さんの支持もあって、しかもチャンピオンにまでなって。いままでとはちがうレイヤーで、いろんな角度からたのしめるのが、いまの新日本のプロレスだと思います。

ケニー:私は、いい人と悪い人のどっちかだけ、というのはちょっとヘンだと思うんです。善でも悪でもなく、白でも黒でもなく、どっちも持っているのが人間です。だから、私のプロレスはそうなります。私は海外ドラマの「ブレイキング・バッド」が好きです。なんであのドラマがおもしろいのか。それは善と悪だけでは説明できない、どっちもあるような世界だからだと思う。私の試合を最初から見ると、まるであのドラマを見ているような、エモーショナルの幅を感じると思います。そんなパフォーマンスをしたいと思っています。

糸井:ふつうの格闘家の人たちって、観客をあおったり、演説する人が多いけど、ケニーさんはそういうのがまったくないね。ずっと語り口がやさしい。

燃え殻:ケニーさんは、ほんとそうなんです。昔のマイクパフォーマンスって「制圧」や「罵倒」ばかりだったんですが、ケニーさんは「語りかけ」なんです。「みんなたのしんでくれた?」って。

糸井:そんな気がしました。なんでかわからないけど、『MOTHER』のファンってこういうタイプが多いよね(笑)。

ケニー:(笑)

糸井:亮君さんは、新作が発売されたあと、どういう活動をされるんですか。

亮君:いま、メンバーのひとりが、首の振りすぎでヘルニアになっちゃって‥‥。

ケニー:ヘッドバンギングのしすぎで?

亮君:そう、首の振りすぎで。それで首の手術をしたので、しばらくはリハビリの時間が必要で。

ケニー:え、手術も?!

糸井:はぁぁ、プロレスみたいだね。

亮君:なので、リハビリの間は、いろんなところにプレゼンに行こうかなって。

田中:亮君については、私からも補足したいのですが、さっき糸井さんから「どれだけファンがイヤがっても、じぶんたちの好きなものを貫けるかどうか」みたいな話がありましたが、じつは、亮君はすでにそういう段階に入っているんじゃないかって思うんです。というのも、最新作に『拝啓VAP殿』という曲があるんですが、それを聴いていると、亮君の原点にあるような、爽やかでピュアなロックというものに、すでに取り組みはじめているように感じるんです。

亮君:ああ、そうですね。

糸井:なるほど。

田中:今度の原作マンガのほうも、ちゃんと考えて仕掛けているというか、亮君がこのままじゃイヤだから、こういうやり方をやるという試行錯誤が、ちゃんとかたちになってる気がします。

そういうところを見ていると「過激なことをするから、過激を求めるファンにウケている」というところからは、すこし先へ行きはじめた段階じゃないかと、私は思っているんです。まあ、チン毛はまた別の話ですが(笑)。

糸井:あなた、よく言えますね、そんなことば。

亮君:(笑)

田中:ほぼ日には絶対のらなそうな単語ですね。

永田:のせます。

田中:のるんだ!

永田:この文脈なら大丈夫。

会場:(笑)

糸井:まあ、どちらもすごくたのしみです。またおたがいの場面で会うかもしれないし、ぼくもおふたりのライブに連れてってもらうかもしれないですし。ひとまず、きょうはこのへんにしましょうか。ケニーさんも亮君さんも、どうもありがとうございました。

会場:(大きな拍手)

糸井:はじめはどうなるかと思ったけど(笑)、おもしろかったね。

亮君:ありがとうございました。

ケニー:どうもありがとうございました。

永田:最後はせっかくなので、ここにいるみなさんといっしょに記念撮影をして終わりにしましょう!それではみなさん、もういちどケニーさん、亮君さんに大きな拍手をお願いします。会場のみなさんも、ご清聴ありがとうございましたー。

会場:(再び、大きな拍手)

(終わります)

 ***

マキシマムザ亮君からのお知らせ!
マキシマム ザ ホルモンの最新作『これからの麺カタコッテリの話をしよう』、好評発売中!
詳しくは特設サイト http://u0u0.net/OHPUからどうぞ。

ケニー・オメガ(Kenny Omega)新日本プロレスに参戦するプロレスラー。
1983年生まれ。出身地はカナダ・マニトバ州。所属ユニット「THE ELITE」。第66代IWGPヘビー級王者。得意技は「片翼の天使」「Vトリガー」など。大のゲーム好きとして知られる。「ゴールデン☆ラヴァーズ」としてタッグを組む飯伏幸太選手との技に「PKこころ」という技もある。新潮社より新日本プロレス公式ブック『NEW WORLD』絶賛発売中。

マキシマムザ亮君(まきしまむざりょうくん)「マキシマム ザ ホルモン」の歌と6弦と弟。
1978年生まれ。 1998年に結成された 「マキシマム ザ ホルモン」に加入。 すべての作詞作曲を担うバンドの中心人物。 足元はいつも便所サンダル。 前作のアルバム『予襲復讐』は、 週間アルバムランキング3週連続首位を獲得。 2018年11月28日に発売された最新作 『これからの麺カタコッテリの話をしよう』は、 新曲CDとマンガをセットにして書籍として発売。 収録されたマンガ 『マキシマムザ亮君の必殺!!アウトサイダー広告代理人』は、 マキシマムザ亮君が監修・脚本を担当。

糸井重里(いとい・しげさと)株式会社ほぼ日代表取締役社長。
1948(昭和23)年、群馬県生れ。コピーライター。「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰。広告、作詞、文筆、ゲーム制作など多彩な分野で活躍。近作に『他人だったのに。』『みっつめのボールのようなことば。』など。著書に『海馬』(池谷裕二との共著)『黄昏』(南伸坊との共著)『知ろうとすること。』(早野龍五との共著)ほか多数。

古賀史健(こが・ふみたけ)ライター、株式会社バトンズ代表。

燃え殻(もえがら)都内のテレビ美術制作会社勤務。作家。

田中泰延(たなか・ひろのぶ)ライター、コピーライター。自称・青年失業家。

浅生鴨(あそう・かも)作家、広告プランナー。

永田泰大(ながた・やすひろ)ほぼ日の乗組員。

2019年1月8日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。