平成最後の「紅白」は歌よりパフォーマンス重視、お年寄りからは過剰な演出に不満の声も……

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NHKも批判は折り込み済み!?

 前出の民放キー局スタッフは「世代ごとに受け止め方が違った可能性はあるでしょう」と推測する。

「若い世代は“楽しめた”と“邪魔”に分かれたと思います。昭和生まれで、なおかつ『歌をしっかり聴きたい』と考えていた層だと、“邪魔”に感じたと思います。結局、NHKとしては、『平成のヒット曲には聴きたいものが少ない』と判断し、『演出で楽しませるしかない』という苦肉の策だったように見えました」

 この他、民放キー局スタッフは「メドレーが多かったのも特徴の1つです」と付け加えた。これも、1曲をじっくりと聴きたいファンのニーズには逆行する演出だ。

 ビデオリサーチの視聴率データが残っているものを対象とした場合、紅白歌合戦の平均最高視聴率は1963年の第14回になる。今回の第69回と出場歌手の年齢に注目し、比較する表を作ってみた。

 第69回の場合、紅組にも白組にも所属しない、サザンオールスターズや北島三郎(82)といった「特別枠」は除外した。

 驚かされるのは、第14回に出演した歌手の年齢だ。紅組も白組も極めて若い。特に紅組は平均年齢が15歳も違う。白組のトリを務めた故・三波春夫(1923~2001)も40歳になったばかりだ。

 つまり紅白の黄金期は、今よりも出演者の年齢は若く、それを老若男女の視聴者が楽しんで見ていたことが分かる。

 当時の高齢者でも、弘田三枝子(71)や伊東ゆかり(71)の曲を楽しんで聴いていたのだ。一方、今の80代にDAOKO(21)やKing & Princeは辛いだろう。全世代から愛される、「今年を代表する1曲」が消滅してしまったのは、誰もが知っての通りだ。テレビ担当記者がNHKの視聴率戦略を明かす。

「視聴率を取るためには、とにかく1人でも多く若者に紅白歌合戦を見てもらう必要があります。80代や70代の高齢者は、若い歌手の理解不能な歌や、過剰な演出に戸惑ったとしても、チャンネルを替えることはないからです。また高齢者も、ダンスやパフォーマンスの演出を“お祭り”として好意的に見ておられるかもしれません。ただ、石川さゆりさん(60)の『天城越え』が布袋寅泰さん(56)とのコラボというのは、さすがに苦情が来てもおかしくないでしょう。それもNHKは、批判を折り込み済みでやっているのだと思います」

 前出の民放キー局スタッフは、「NHKは今後も、紅白の過剰演出を続けていくでしょう」と予測する。

「内村光良さん(54)を総合司会に起用したのも、バラエティ色を強く打ち出し、若年層を狙ったものと考えられます。そしてサザンオールスターズのパフォーマンスは、歌詞を勝手に変えたり、腰を振ったり、従来のNHKならトラブルに発展してもおかしくない内容だったはずです。しかし、こちらは大盛り上がりで、『終わりよければすべてよし』という結果になりましたね。NHKは今後も、歌や楽曲の良さより、盛り上がるパフォーマンス、斬新なコラボ、といった演出を推し進めていくはずです」

 劇薬の効き目は高いが、人間には耐性がある。“過剰”が当たり前になってしまえば、結局は飽きられてしまうのではないだろうか……。

 素人としては、こんな心配をしてしまうわけだ。とはいえ、少子高齢化社会で、なおかつ、個々人の趣味嗜好が分散した状態で、「国民的歌番組」を制作するというのは、やはり大変なことのようだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年1月8日掲載

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