「私に見破れぬ擬態などない!!」 枯葉や木の枝そっくりな「冬の虫」を探す方法

ライフ2019年1月5日掲載

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 いよいよ冬も本格的になってきて、子どもたちは冬休み。「どこかに連れて行って~!!」と言われてもスキー場は遠いし、スケートだってリンクはどこに行っても混んでいるよ~。……というか、お父さん、氷の上は滑れませんがな。

 ということで、ちょっと変わった視点で子どもたちを驚かせてみよう。夏休みに虫捕りに熱中していた子どもたちには、超感動のビッグプレゼント! もちろん見つけられたら、の話なんですけど……。

 小松貴著『昆虫学者はやめられない』(新潮社刊)には、冬の虫を見つける秘訣がいっぱい。これを読んだらきっとあなたも発見出来るはず!? さあ、寒空の下、レッツ・トライ!(同書より一部抜粋)

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 隠蔽擬態で身を守る昆虫は多岐に及び、その擬態対象も枯葉、花、枝、樹皮など様々だ。日本では特に、越冬中の昆虫において隠蔽の技の洗練されたものが多いように思う。何せ、越冬中の昆虫は仮死状態となるため、しばしば危険が迫ってもその場から一歩も動けない。敵に存在を認知されたら、もはやなす術がないので、敵に認知されてはならないという淘汰を幾世代にも亘りかいくぐり続けてきた結果であろう。虫が少ない冬の間、私は裏山でこうした越冬中の昆虫を探し、隠蔽の術を見破る「能力」を養成するのだ。

 私が足しげく通った長野の裏山の畑には、桑の木が幾つか生えていた。冬になると、枝のどこかに尺取虫が付くのだが、そいつの枝への似せっぷりはとにかく神がかっていた。クワエダシャクというガの幼虫たるこの尺取虫は、その名の通り桑の木だけにしか付かない。秋が深まってくると、彼らは一番尻の方に付いている2対の脚(腹脚)だけで枝をしっかり掴み、斜め懸垂をするような体勢で不動となる。この体勢のまま、風雨に直に晒されつつひと冬を耐え忍ぶのである。その体の色や肌の質感は、桑の枝特有のそれをものの見事に再現している。

 さらに、この尺取虫の頭の形がまた、桑の枝の冬芽に瓜二つなのだ。どこからどう見ても、冬芽を付けた小さな横枝にしか見えない。だから、これを桑の木1本からたった1匹でも見つけ出すのは、初見では至難である。

 しかし、何回も探し続けていると、一見無造作に枝に止まっているかに思える尺取虫も、大雑把にこの辺にいる確率が高いという傾向が分かってくるのだ。少なくとも私が出入りした裏山において尺取虫は、木の枝の末端部にはほぼ付かない。幹の低い辺りから張り出す太い横枝の、比較的付け根近くに付いていることが多い。だから、今では何の下見もなくいきなり冬にその桑の木の所へ行っても、反射的にその部位だけを見る癖がついたため、だいたい15秒もあれば私は尺取虫の1匹や2匹はすぐ発見できるようになった。しばしば自然観察会などで、虫に関して明るくない人と裏山を歩く際、たまたま通りすがった桑の木の前で瞬時にこの尺取虫を数匹見つけて見せると、10人が10人白目をむいて驚く。何でこんなものすぐ見つけられるんだ?? と。実に気分がいい。こういう時に覚える愉悦は、幼稚園や小学校で昆虫博士じみた奴がクラスメートから昆虫に関するQを投げかけられ、即座に答える時に覚えるそれと根幹は同じだと思う。

 尺取虫に限らず木の枝に擬態するタイプの越冬昆虫は、低い場所から張り出す太い横枝に身を固めるものが多いように思う。いくら雨ざらしで耐え忍ぶとはいえ、雨風の影響をまともに受け、場合によっては枝ごと折れて落下する危険もはらむ枝の末端部にはなるべく居たくないわけだ。扁平な体で枝にべたっと張り付き姿を消すコミミズクの幼虫も、そうした場所に着目して探すと難なく見つかる。

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