「下町ロケット」vs「ハラスメントゲーム」満足度分析 企業ドラマが女性にウケる時代

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深い奥行きが魅力!?

 例えば終盤に入り、何が本当で、誰が誰の味方か敵か、展開は複雑に変化した。
役員秘書にセクハラで訴えられた秋津(唐沢寿明)は、実は2人の会話を録音していた。ところが身の潔白を証明する貴重なデータなのに、ボイスレコーダーのチップを折り破棄してしまった。

 自主退職と下請けへの再就職という危機に陥った秋津に対して、妻・瑛子(石野真子)の反応も絶妙だった。これまでなら「これからどうなるの」と夫を責めていたが、「そんなのおかしい、訴えるべき」「そんな会社、辞めちゃいなさい」と夫を鼓舞する。彼女の前ではお調子者を決めてきた秋津も、その時ばかりは一味違う反応を見せた。

 過去に経緯があった脇田常務(高嶋政宏)も、反社長・反秋津かと思いきや、対応が変わった。自ら秋津に自主退職と下請け会社への再就職を伝える役を買って出たのに、秋津が役員会で退職願を出すと、「その必要はない」と破り捨ててしまった。

 紋切り型でなく、善悪・好悪など多面性を持つ人間の複雑な部分を出しながら展開した「ハラスメントゲーム」。テレ東のドラマBizは、クールを重ねる毎に確実に質量ともに評価が上がっている。

 どうやら“勧善懲悪”かつ“小が大を倒す”爽快感は、手っ取り早く数字を獲るには鉄板のようだ。ただし男の世界でのドラマに、女たちは徐々に異議を唱え始めている。
そして自分事として身近に感じられるテーマなら、企業ドラマといえども女たちは面白いと思うようになっている。

 そして評価の声は幅広い層に広がり始めている。

「脚本が良いと思う」(43歳女性)
「働く男の格好よさが伝わります」(35歳女性)
「いろんなハラスメントがあるんだって知れて面白い」(18歳女性)
「現代の会社の闇みたいなのが面白い」(19歳女性)

 どうやら企業ドラマの新種が登場したことで、TVドラマの可能性が一段と増したようだ。TBS日曜劇場の鉄板ドラマと、テレ東ドラマBizという新たな挑戦。今後もテレビの多様性を増すこうした番組に期待したい。

鈴木祐司(次世代メディア研究所代表、メディア・アナリスト)
1982年にNHK入局。主にドキュメンタリー番組の制作を担当。2003年より解説委員(専門分野はIT・デジタル)。編成局に移ると、大河などドラマのダイジェスト「5分でわかる~」を業界に先駆けて実施したほか、各種番組のミニ動画をネット配信し視聴率UPに取り組んだ。2014年独立、次世代メディア研究所代表・メディアアナリストとして活動。

週刊新潮WEB取材班

2018年12月23日掲載

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