豊洲「ターレ」事故で死亡者第1号 形骸化した交通ルール

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

一般道と高速道路

 女性が亡くなったことは、市場内でも広まりつつある。ベテラン仲卸業者が言う。

「事故の場所は、水産仲卸売場棟がある7街区から青果棟のある5街区に行くときに通る、市場の一番外側を走る道。築地のころは水産と青果の売場は一緒にあって、買い回りも楽にできたんだよ」

 買い回り、とは言葉の雰囲気の通り、あちこちで買い物することを意味する。

「豊洲では水産と青果が離れてしまったから不便になった。買い回りのためには、バスや軽トラなんかで移動しなきゃいけないわけだ」

 事故現場は、基本的にはトラックやバスが通る道。

「だけど、ターレも走れる。以前から、バスや軽トラと一緒にターレが走るのは危ないという声はあった。築地は道が狭いからスピードを出せない反面、豊洲は出せる。ターレにとって築地は一般道、豊洲は高速道路ですから。でも、いまもみんなふつうにターレに人を乗せてるし、制限速度8キロの道を15キロ以上出してビュンビュン移動してるよ。ターレの事故は築地でも年に数百件あった。今回のような死亡者は出ていないけどね」

 そんな市場の犠牲者について、冒頭の事情通が語る。

「彼女は、都内を中心に10店舗ほど展開している中国料理店のオーナーのお姉さんです。店の名物は上海蟹で、吉永小百合や生前の高倉健といった有名人が贔屓にし、政治家などにもよく使われている。本当に、残念でなりません」

 彼女はふだん、アメリカにいることが多かったという。都が安全だというから、覗いてみたのだろう。

週刊新潮 2018年12月20日号掲載

ワイド特集「平成『家族劇』の千秋楽」より

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。