織田裕二「SUITS/スーツ」の第5話視聴率が“奇跡のV字回復” その原因は?

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“押し番組”をフル活用しているのはテレ朝

 この制作スタッフによると、「“押し番組”を最も効率的に放送し、着実に地上波の視聴率を獲得しているキー局」は、TBSとテレビ朝日が代表例だという。

「どちらも再放送に力を入れています。TBSなら『日曜劇場』(毎週日曜:午後9時〜午後9時54分)でしょう。『下町ロケット』や『陸王』、『半沢直樹』などの作品は例外なく、日曜の昼間に再放送されました。そして数時間後に放送される回の予告編をPRスポットにして数多く放送し、視聴意欲を高めたのです」(同・制作スタッフ)

 テレビ朝日の再放送と言えば、贅言は必要ないだろう。「相棒」シリーズ(水曜:午後9時〜午後9時54分)と「科捜研の女」シリーズ(木曜:午後8時〜午後8時54分)は、毎日のように再放送されている。

「例えば10月29日の月曜、テレビ朝日は午後2時57分から午後4時50分までの間、『科捜研の女 season 13』の第5話と『相棒 season12』の第15話を再放送しています。視聴率が4.5%と7.3%と好調なことも特徴の1つです。TBSとテレ朝の“再放送戦略”は、制作費がゼロという利点もあります」(同・制作スタッフ)

 ダイジェスト版は1回の放送で4話分を振り返ることができる代わりに、編集などに人件費が必要だ。

 一方の再放送は、制作費ゼロの再放送で昼間の視聴率も獲得し、その勢いを夜の本放送に結びつけるという“好循環”を成し遂げている。その上、テレビ朝日の場合は、「相棒」も「科捜研の女」も人気シリーズのため、ストックは無数にある。いくらでも再放送が可能なのだ。

 逆にドラマの再放送を全く行わないのは、日本テレビだ。制作スタッフによると「日テレの視聴率が好調なのが、最大の理由です」と指摘する。

「要するに土日の昼間に枠がないんです。視聴率の三冠王を獲得し続けている日テレにはCMスポンサーが殺到しているので、再放送ではなく新規番組が必要。そのため日テレは、土日の午後をスポーツ中継か新規のバラエティ番組の実験枠として扱っています」

 ドラマの再放送で午後の枠が埋まってしまうTBSとテレ朝は、新規番組の実験枠が深夜にしか存在しない。この点は日テレが有利だ。土日の午後のほうが広範な視聴層が見込める。将来的にゴールデンタイムでレギュラー化できるかどうかの判断が付きやすい。

 一方の日テレは、土日の午後の時間帯を使い、連続ドラマのテコ入れを行うことが不可能な状態になっている。また再放送というコストゼロの恩恵とは無縁だ。

「今年の年間視聴率競争は、テレ朝がドラマを大量に再放送する戦略で、日テレを猛追しています。“押し番組”に経営面での妥当性がある証左ですが、テレビという娯楽文化を存続させるためには、私は日テレの姿勢が正しいと思います。気がつけば今のテレビ欄は、再放送だらけです。目先の視聴率を確保することは大事ですが、視聴者のテレビ離れが促進するリスクは否定できません」(同・制作スタッフ)

 かつてブームになった経営学者のピーター・ドラッカー(1909〜2005)は、「企業の目的は利益ではなく、社会貢献にある」と説いた。“マネジメントの父”で“現代経営学の祖”の言葉は、日テレの戦略に軍配を挙げているようにも思えるが、果たして――。

週刊新潮WEB取材班

2018年11月12日掲載

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