「米中貿易戦争」の中国「3つの罠」と「日本の対応」

国際Foresight 2018年11月5日掲載

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 今、習近平国家主席による政権は、「3つの罠」に直面していると考えます。1つは「中所得国の罠」、2つ目が「タキトゥスの罠」、そして3つ目が「トゥキディデスの罠」です。

 まず「中所得国の罠」ですが、これは誰が最初に言い出したかというと、世界銀行です。国際復興開発銀行と世界銀行の研究報告書をまとめた『東アジアの奇跡』(1994年、東洋経済新報社)という本がありまして、そこで指摘されていることです。

 と言うのは、やはり人件費の安い頃はそれを生かし、人口ボーナスもあってどんどん産業を発展させ、経済も発展する。ただし、人件費が徐々に上昇すると、新興国は技術力で弱いため先進国に追いつかない。そのハードルにぶつかるため、徐々に成長が停滞していくという命題がある。つまり、この「中所得国の罠」に、今の中国も当てはまっているのではないかという議論が出てきているのです。

 想定されているのは、1人当たり国内総生産(GDP)がだいたい1万ドルを少し超えたところで停滞していく。2008年北京オリンピック、2010年上海万博があって、さらに人民元の切り上げもあるので、1人当たりGDPというのはドル建てで計算されるものですから、急速に拡大している。ただ、これからどうなるかというのは、今申し上げた技術力を上げることができれば、さらに成長して先進国に仲間入りできるが、さもなければ、多分停滞する可能性もあると。実際、どうなるかというのはこれからの政策次第、中国人がどこまで努力するかでしょう。

 かつては、確かに人口ボーナスがあって中国経済がどんどん成長してきたわけで、中国人の研究者の間でも、まだまだ中国の人口ボーナスが2020年まで続くと言われていましたが、今はその議論は全く姿を消して、人口ボーナスは終焉が来た、終わったと言われている。今は2人っ子政策になり、最近、中国の民政部幹部は、早ければ年末までに完全に自由化すると言っていました。出産の自由化です。

 その幹部に、ちょっと意地悪な質問をしてみました。「自由化したら、本当に出産率が上がると思いますか」と。すると、「わからない」と困った顔をしていました。やはり、最近の調査では結婚しない若者も多いし、ディンクス族と言って、結婚しても子供を産まない。そして、仮に子供を産んでも1人で十分だと。十分とはどういう意味かというと、自分の親の介護のコストがかかるし、そこに子供の教育費がかかる。他にももろもろ生活費が重荷となっているものですから、安心して2人目、3人目を産んでいくという状況にない。

 そこでもう1つ、民政部の幹部にぶつけた質問は、そうなると都市部の若者が日本、アメリカと同じように子供を産まない、産んでもただ1人だけ、でも地方農家だと3人も4人も産むと、教育レベルが違うから知的なレベルが全く違ってくる。そうすると、中国という国家単位で考えると、国民の間にいろいろな意味での格差が生まれてくるのではないか、という懸念を感じています。

 人口にまつわるボーナスは他にもあり、もう1つが、都市化のボーナス。都市化のボーナスは、今の李克強首相が言い出した話で、農村の人口の一部を都市部に移住させ、それで労働生産性が上がることによって経済が発展する。この工業化の理論というのは、かつて日本などでもありました。ただし、今の中国の都市化のボーナスが本当に役割を果たすかどうなのかというのは、もう少し見極める必要がある。

 3番目が、人材教育のボーナス。恐らくインドと中国を比べた場合、1つの大きな違いが、中国人の一般家庭が非常に教育熱心で向上心が非常に強いということ。ですから、子供を少しでもいい大学へ行かせようと頑張る。当然のことながら、それが経済の効率化にもつながると考えられます。ただ、今、中国では第3次留学ブームが起きており、本当の一流の頭脳が実はどんどん海外へ流れていっているというのが最近の調査でわかった。これも懸念すべき点です。

 最後に、公共投資のボーナス。これは先ほど申し上げた北京オリンピックと上海万博、あのころ高速鉄道、高速道路などのインフラをかなり整備した。が、これも下火になってきている。

従って、いろんなボーナスで成長するというサクセスストーリーが、今は若干弱まっているような気がします。

「毛沢東」ではなく「リー・クアンユー」

 さて、2番目の「タキトゥスの罠」ですが、これは、政治の指導者が国民の間で信頼を失うという事態のことです。カキトゥスの罠にはまると、指導者が何を言っても誰も信用しないという状況。古代ローマ時代の歴史学者・タキトゥスが指摘したことですが、今の中国では、信用の秩序が失われ、政府が何を言おうと信用されなくなっている状況があると僕は感じています。この罠にはまってしまうと、国民が政府と一致団結しなくなる可能性が出てくる。これをどう乗り越えていくかというのが非常に大きな問題ですね。

 歴代の3人の代表的な指導者を並べてみると、恐らく毛沢東という人は、好き嫌いは別として、権力を握っていた、権威のある指導者。だから、この人は個人崇拝をあそこまで確立させたというのはすごいことだと言わざるを得ない。2番目の鄧小平という人は、毛沢東ほど権威はなかった。でも、この人は実は謀略家で、謀略的に非常にたけていた。彼の人生の中で最大の汚点は何かというと、天安門事件だと思います。それでも、一応死ぬまで権力を握っていた。

 そして問題は、今の習近平国家主席。果たして彼に権威があるのかどうなのか。これについて私はとくに言及しません。言及するとちょっと問題になるので、皆さん自分で感じてください。

 中国国内でも海外でも、彼が毛沢東になろうとしている、毛沢東時代に逆戻りしようとしている、という指摘がよくなされます。しかし私は、それは違うと感じています。毛沢東の時代には戻れない。彼がなろうとしているのは、むしろ2015年に亡くなったシンガポールの初代首相リー・クアンユー(李光耀)ではないかという感じが強くしています。

 なぜなら、中国では毛沢東のユートピアというのはもう失敗した、非現実的な社会で、そこに戻るというのは多分多くの人が嫌がるわけです。ごく一部のマインドコントロールされている老人は別として、現実的には毛沢東の時代には戻れない。

 そうではなく、いまの中国の知識人の間では、官僚内でも、いわゆるシンガポールの政治社会モデルは非常にすばらしいという評価が多い。同じ中国系の人たちがつくった国で、腐敗も比較的少ないと。民主主義的な独裁政権にある。それを自主的にやっているわけですから。しかも、権力者は事実上の終身制ですね。国家元首のリー・クアンユーは、死ぬまで実権を握ったわけですから。

 ですから、これは本当に最近気がついたのですが、『リー・クアンユー回顧録(上)(下)』(日本経済新聞社、2000年)を再読してみると、習近平という人はリー・クアンユーを目指しているのではないかなという感じが強くしています。

急がば回れ

 そして3番目の罠というのが、まさに現在の米中貿易戦争のバックヤードとも言える「トゥキディデスの罠」です。

 これは、ハーバード大学の政治学者グレアム・アリソンが、古代アテネの歴史家にちなんで定義した造語です。すなわち、既存の覇権国家と、それに挑戦する新興国がぶつかり合って戦争状態になっていく、という現象を指している言葉ですが、これはまさに今起きている米中貿易戦争ですね。

 もしこの罠の命題が正しければ、恐らく米中の貿易は均衡するか不均衡するか関係なく、中国が台頭しようとすると必ずどこかでぶつかり合うという結論になります。ですから、ある意味では今の米中貿易戦争は不可避だと、回避されなくて必ずぶつかり合うと。かつてイギリスとアメリカもやり合ったことがあるし、日本も、経済規模が世界第2位になったときにアメリカとぶつかったわけですから。この命題を知れば、おもしろいものだろうと思います。

 そうすると、中国は後発組ですから、既存の覇権国家アメリカとぶつかるときに問題になるのが、中国の「やり方」だと思います。つまり、中国にとって難しいのは、既存の国際秩序という「壁」。国際貿易や投資、知的財産権保護のルールなど、こういった秩序は先進国がつくったものですから、後発組の中国にとっては、これが本当に有利なのか不利なのか、いろいろな考え方、捉え方があるのだと思います。しかし、中国はそれにチャレンジしようとしている。

 ただ、私の考えでは、中国自身が自国の「技術力」という面を過大評価していたのではないかと思います。本来は、もう少し冷静に見て、今はチャレンジするのではなく、もう少し力を蓄えておいたほうがよかったのではないかと。「中国の夢」と習近平主席は言いますが、急がば回れという諺もあるのですから。

 さらに言えば、国民のコンセンサス。国内で、本当に国民みんながアメリカとの貿易戦争の心の準備ができているのかどうなのかというと、必ずしもそうではない。

 たとえば、中国の歴代指導者は、いろいろなプロジェクトを花火のように打ち上げてきた。「東北振興」、「西部大開発」、「一帯一路」、そして今は「中国製造2025」。

 さらに対外的には、上海協力機構とか中国アフリカサミット、それから世界の主要国の大学でやっている孔子学院など。本当にいろいろなビッグプロジェクトを掲げるわけですが、果たしてどれぐらい成功をおさめたのかが問われている。ですから、急がば回れ。もう少し世界情勢を見極めておいたほうがよかったのではないか。私は、そう思います。

「切り捨ての文化」

 では、中国自身が抱えているリスク要因について点検します。

 最近、いろいろなところで指摘されているのが、中国発の金融危機の可能性、債務の問題です。ただし、中国の場合、経済指標に基づく分析というのは正直に言うとできない。なぜなら、正確なデータがディスクローズされていないから。国家のバランスシートが、正確に分からないのです。

 ただ、国債や地方債の発行状況、あるいは国有企業の社債や金融債、金融機関に借りている債務などの確認できる分のデータを見ると、恐らく国家としても危ない状況にあるのではないか。財務のバランスが悪化しているのではないか。なぜかと言うと、不動産価格がかなり上がっている。国内総生産(GDP)比で言うと、250%以上に達していると言われています。

 では、なぜ中国で金融危機が起きないのか。これぐらいの債務だったら、ほかの新興国であれば金融危機になる。

 よく言われることですが、まず日本はなぜ債務危機にならないか。日本は1000兆円を超える先進国の中でも飛びぬけて借金の多い国です。新興国ならとっくに破綻しているのに大丈夫なのは、日本の国債を保有しているのはほとんどが日本の国民だから。厳密に言うと金融機関ですが、国民の預金や保険がその原資。海外債務が少ないから、債務危機にならないわけです。

 では、中国はどうなのか。我々中国には、「切り捨ての文化」があるのです。

 たとえば、ある銀行のある支店で、バンクラン(取りつけ騒ぎ)が起きるとなったとき、民主主義の国であれば、まず情報公開して、それから助ける。しかし、そうしているうちに必ずシステムに飛び火し、システムリスクが顕在化し、場合によってクライシスになる。1998年の金融危機がまさにそう。

 中国はどうなるかというと、その銀行、あるいは支店の預金者、銀行の債権者をひっくるめて、切り捨てるのです。それらをまとめて「癌」だとみなして切り捨てる。そうすることでシステムに飛び火しないようにする。これが独裁政治だからできるわけです。局所的な危機は起きるけれど、全体的な危機は起こさせないというやり方でずっとやってきたのです。

「民営企業」は「国有企業」の補完役

 最近、中国では「所有制」についての論争が繰り広げられています。これは、これから中国がどういう方向を目指すのかという議論にも発展し、それについて真っ向から対立する2つの考え方があります。

 たとえば、市場と国家。これは伝統的な、あるいは古典的な命題ですが、市場の役割が重要なのか、国家の役割が重要なのか。それから、自由化していくのか、もっと管理を強化するのか。民営化をどんどんどんどん進めたほうがいいのか、それとも国有化を強化するのか。最後は、資本主義か社会主義かというイデオロギーの議論があるわけですけれども、中国はやはり、今後も「国家」「管理」「国有化」「社会主義」という方向に進んでいくでしょう。

 それに関連して、いくつか事例を申し上げます。

 1つは、「アリババ」のジャック・マー(馬雲)会長が9月、1年後に引退すると表明した。まだ54歳です。理由について、さまざまな憶測がなされています。

 中国国内でいくつかの調査がありまして、民営企業の平均寿命、設立されてから解散するまで、破綻するまで、平均どれぐらい続くかというと、4年半だそうです。もっと短い調査もある。いずれにせよ、短命で終わる。その中で最も成功をおさめた民営企業が、アリババです。その創業会長が、この若さで退任を表明する。

 一方、このアリババのライバルとも目され、中国で1、2を争うネットショッピングの「京東集団(JDドットコム)」という企業があります。「eコマース」ですね。このCEO劉強東が8月、アメリカへ出張した際(同社はナスダックで上場している)、女性への性的暴行容疑で地元警察に逮捕されていたと報じられました。ただ、報道によると、出張には妻子も同伴しているし、彼が主催したレストランでのパーティで暴行したことになっている。ハニートラップ、あるいは何らかの罠ではという説もあるし、実際、保釈金もなしですぐに釈放されたという報道もあり、真偽はよく分からない。本当に罠だとしたら、誰がどういう目的仕掛けたのかという疑問が残る。

 さらにもう1つ、これは中国国内で有名な話ですが、「安邦保険」の呉小暉という会長兼CEOがいました。彼は鄧小平の孫娘と結婚した婿さんですが(後に離婚)、詐欺や職権乱用の罪で懲役18年の有罪判決を受け、1800億円の個人資産も没収されました。

 つまり中国では、民営企業が成功し、どんどん発展して一定の規模を超えたときに、何らかの身の危険を感じることがあるのではないか。

 ここでトータルとして欠如しているものがあるとすると、僕はガバナンスだと思うし、「The Rule of Low(法による統治)」ということ。ジャック・マーが引退を表明したのは、やはり何か安心できない理由があったからではないのか。この「The Rule of Low」によって守られていないと感じていたからではないか、と思えてしまうのです。

 そうすると、この議論の先にあるのが、先ほど申し上げた、社会主義なのか資本主義なのか、国有企業なのか民営企業なのか、という話に繋がっていく。

 中国の場合、計画経済の主役はあくまでも国家です。市場経済ではないのです。世界貿易機関(WTO)の言葉で言えば「Non-market Economy」で、市場経済ではない経済なのです。

 そういう仕組み、枠内で先ほど言った「東北振興」「西部大開発」「一帯一路」「中国製造2025」を推し進める。いわば国有財閥をつくる。すなわち、あらゆる経済活動に政府が直接介入するというやり方です。これこそ、トランプ大統領が最も嫌う手法なわけ、これはだから、中国の「国進民退」というのは、まさに米中貿易戦争の遠因と言っていいというふうに思います。

 では、中国の民営企業はこれからどうなるのかというと、民営企業はあくまでも国有企業の補完的な部分であって、主役は国有企業だろうと思います。実際、たとえば米誌『フォーチュン』が毎年1回発表している世界の企業を対象にした総収益ランキング「フォーチュングローバル500」に含まれている中国企業を見ると、圧倒的に国有企業のほうが強くなっている。こういう現状に、中国の民営企業経営者たちは、非常に不安を感じている。だから、ジャック・マーがなぜいきなり引退すると言い出したかというのは、その背景にこうした中国の現状があるからなのだろうと思うのです。

 ただ、これは私があくまでもマクロで見ていることですから、実際に彼らが感じているプレッシャー、ストレスというのは、これの数万倍あるだろうというふうに言っていいと思います。

今は「Wait and see」で

 米中貿易戦争でトランプ大統領が問題視している1つ、と言うかかなり大きな部分に、知的財産権の問題がありますね。

 これに関連して言えば、中国の企業、研究者は、基礎研究をやりたがらない。中国全体のデータで見ても、先進国に比べて基礎研究につぎ込む予算が圧倒的に少ない。日本の約3分の1、アメリカの約4分の1程度です。その予算も、対象は国家プロジェクトがほとんど。民営企業レベルではほとんどやらない。

 その大きな理由の1つが、何といっても中国では知財権が保護されないということ。だから、企業が基礎研究に取り組むインセンティブが非常に弱い。この構図をどう直していくかというのが、大きな課題でしょう。これは一朝一夕にできるわけがないので、多分時間をかけてやらねばならない。

 では、これもよく最近、問題として提起されますが、中国企業の特許申請の状況はどうなのかという話です。

 確かに、申請の件数を見ると、中国企業はダントツです。在中国の企業を国別に見て、特許申請の数を集計した2016年のデータがあります。それによると、中国が133万件なのに対して、日本企業は32万件、アメリカ企業でも61万件でした。しかも、中国の申請件数は、ここ数年で急増していて、2010年には40万件ほどしかなかったのに、6年で3倍以上に増えた。すさまじい増え方です。

 ただし、例えば精華大学とか北京大学とか、学者の皆さんと、なぜこんなにたくさん特許が申請できるのか、そこまでやっているのかどうなのかという議論をいろいろさせていただきました。そうすると、実はこれらの特許というのは必ずしもオリジナルの技術ではないということです。固有名詞は避けますが、要するに、中国の多くの企業が、先進国からエンジニア、技術者を雇って、既存の特許の開示されているデータを読み取って、それを手直しして、あたかも新しい技術であるかのように申請しているのが、実は相当数含まれているということです。

 ですから、結局、オリジナルの技術をどれぐらい持っているのかというのは、正直、よく分からない。

 ただ言えるのは、たとえば、今回の中国の通信機器大手「ZTE」でも通信ネット機器メーカー大手「華為技術(ファーウェイ)」でも、アメリカで制裁を受けると簡単に生産停止になっちゃったわけです。本当に技術力があれば、そう簡単にやられないはず。ですから、残念ながらまだまだ独自の技術という面では弱いような感じがしています。

 EU(欧州連合)の商工会議所が開示している、ヨーロッパの企業が中国における知財権保護の法規をどう見ているかというアンケート結果があります。これを見ると、「非常にいい」という回答はごくわずかです。「満足いかない」という回答が半分以上で、「良くない」「役に立たない」という回答が残りの半分近くを占めている。

 また、法律の条文はともかくとして、その執行状況はどうなのかという話になると、ほぼ似たような結果ですね。たとえば、知財権が侵害されているのでそれを中国国内で訴えても、実際に勝ったケースはごくごくわずかで、ほとんどが訴訟を起こしても役に立たないという回答です。ですから、外国企業から見ると、まだまだこの問題には大きな課題が残っている。

 つまり、今回の米中貿易戦争というのは、まさに焦点の1つはこの問題ですから、これはもっともっと長期化していくだろうなという感じはしております。きっかけは貿易収支の不均衡ですけれども、問題はそれだけじゃなく、中国の国有企業への補助金が不透明であること、知財権の侵害、などなどいろいろあるということです。

 そういう状況の中で、では日本企業はどうすればいいのか。

 私は、今はあまり軽々に動くとやられちゃう可能性があるので、今は「Wait and see」、つまり様子を見ながら、もう少し見極めた上で動くべきだろうと思います。それから、リスク管理。「Asset Reallocation」です。中国に工場はあるんでしょうけれども、それをどうロケーションするかというのが、これからもう少し考える必要がある。そして、「Supply Chain」と「Value Chain」をきちんとメンテナンスしていく。アメリカと中国、この2つの巨大マーケットが今、寸断されようとしているので、それぞれと個別にどうアクセスしていくのか。自社の工場がそれ以外のところで代替生産地をどう確保できるかという点が、多分これから問われるだろうなというふうに思います。

※本記事は、2018年9月19日、「富士通総研経済研究所」で行われた柯隆氏による「中国通セミナー」の主要部分を採録したものです。

柯隆
公益財団法人東京財団政策研究所主席研究員、静岡県立大学グローバル地域センター特任教授、株式会社富士通総研経済研究所客員研究員。1963年、中国南京市生まれ。88年留学のため来日し、92年愛知大学法経学部卒業、94年名古屋大学大学院修士取得(経済学)。同年 長銀総合研究所国際調査部研究員、98年富士通総研経済研究所主任研究員、2006年富士通総研経済研究所主席研究員を経て、2018年より現職。主な著書に『中国「強国復権」の条件:「一帯一路」の大望とリスク』(慶応大学出版会、2018年)、『爆買いと反日、中国人の行動原理』(時事通信出版、2015年)、『チャイナクライシスへの警鐘』(日本実業出版社、2010年)、『中国の不良債権問題』(日本経済出版社、2007年)などがある。