障害者雇用、国を挙げてのインチキを断罪する!(石田純一)

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石田純一の「これだけ言わせて!」 第9回

 自民党の厚生労働部会長になった小泉進次郎議員が「悪質だ! あり得ない」と発言していたが、まさにその通りだと言うほかない。来年、小学校に入学する息子の理汰郎だって、そんな理屈は通らないことがわかるはずだ。障害者雇用に関して行われていた不正のことである。

 障害者の法定雇用率、つまり全従業員のうちに占める障害者の割合は、国や地方公共団体の場合、2.3%(今年4月からは2.5%)以上とするように、障害者雇用率制度で定められている。

 ところが、ご存じかと思うが、国の33行政機関のうち28が水増し申告していて、その数はなんと約3700人。現実には、雇用率はたったの1.18%に過ぎなかったのだ。しかも内閣官房にはじまって、財務省、法務省、経済産業省、そして雇用の旗振り役の厚生労働省……と、主要な官庁が軒並み名を連ね、財務省(具体的には国税庁)など、1960年から58年間もインチキをしていたというから、驚き呆れる。そのうえ地方公共団体、教育期間なども約3800人を水増ししており、合計するとその数は7500人にもおよぶというのだ。

 ちなみに、民間企業は障害者雇用が法定雇用率を下回った場合、1人につき4~5万円の罰金を科せられるが、国や地方公共団体に向けては、そういう罰則がない。それをいいことに水増しのし放題だったわけだが、では、どうやって水増ししたのか。たとえば、視力が裸眼で0.1を下回っている、うつ病の気がある、という人を、障害者手帳も持っていないのに強引に障害者に組み入れていた。また、きちんと障害者を雇用していた場合も、その人が定年退職すると、新規に採用せず、当てはまりそうな人を障害者にでっち上げていたのである。

 彼はメガネをかけているから障害者にしちゃえ、という勢いで辻褄合わせをしてきたのだろう。官僚たちに言わせれば、それも苦心の策なのかもしれないが、同じ苦心をするなら、国会できちんと答弁するとか、ほかの方向を志すべきだろう。杜撰だが恣意的で、あまりに情けない。

 特に中央省庁は東大を卒業した人が多いはずなのに、彼らはこんなに幼稚なインチキを行って平気なのだろうか。俳優ごときに偉そうなことを言われたくない、と思うかもしれないが、あえて言わせてもらう。倫理観も正義感も欠如しすぎているぞ! 愛情も責任感もなさ過ぎるぞ!

 これは国家による偽装と言って差し支えないだろう。それは、日本という国の礎に大きなヒビを加えることにもつながる。先日、免震装置のデータ改ざん問題が発覚したが、近年、民間企業による同様の偽装問題が後を絶たない。それも、国を代表する鉄鋼や自動車等の大手企業がだ。しかし、国家が率先して数値の改ざんをしてきているのだ。国がひどいお手本を示しているのだから、民間の偽装を責められた義理ではない。それに子供たちが、国がウソをつくんだから自分たちもウソをついていいんだ、と思ってしまう。

 それにしても、今なお海外からは「正直で誠実」だと思われている日本人だが、いったいどうしてしまったのか。たとえば、サッカーでも日本のフェアプレー精神は長く讃えられていたが、一方で、こんなインチキを平気で行っている。日本人が元来持っていた精神が失墜する前に、自浄しませんか。

石田純一(いしだ・じゅんいち)
1954年生まれ。東京都出身。ドラマ・バラエティを中心に幅広く活動中。妻でプロゴルファーの東尾理子さんとの間には、12年に誕生した理汰郎くんと2人の女児がいる。元プロ野球選手の東尾修さんは義父にあたる。

2018年10月31日掲載

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