韓国最高裁で「元徴用工」勝訴濃厚 日本企業に“慰謝料2兆円”請求の最悪シナリオ

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日本側は毅然とした態度で応じるべき

 大法院が賠償判決を確定させると、今後の懸念点は2つ。1つは訴訟の増加だ。慰安婦本人や遺族が氏名を明らかにして訴訟に踏み切る精神的ハードルは極めて高い。だが、元徴用工や遺族に、そうした逡巡があるはずもない。事実、最高裁の差し戻し判決が出てから、日本企業を相手取った訴訟は増加している。

 韓国政府は「強制労働の戦犯企業」299社を発表しており、そこには日本のトップクラスの企業名がずらりと並ぶ。主張する対象被害者は22万人。もし本人や遺族が集団提訴を行い、1人1000万円(1億ウォン)の賠償が認められると、単純計算で2.2兆円に達してしまう。

 懸念の2つ目は、最高裁の判決を受け、原告側が日本企業の韓国における資産の差し押さえに踏み切ることだろう。

 現在、上告審は3件あり、原告は計32人。高裁では9件の訴訟で約100人の原告が三菱重工など4社を訴え、地裁では3件、約800人の原告が約90社を提訴している。請求金額は合計で236.6億ウォン、日本円で約24億円となる。これを順次、差し押さえの対象とされると、企業側の動揺は相当なものがあるだろう。

「ただし、決して韓国世論も一枚岩ではありません。差し押さえリスクを嫌忌し、日本企業が韓国から撤退するリスクも高まっているからです。これを不安視する韓国の経済界は韓国政府に冷静な対応を求めています。日本企業が撤退すれば、困るのは韓国です。日本ではありません」(同・西岡氏)

 文在寅政権には対日強硬派が多い。日韓関係が悪化すれば、その分、南北関係が進展すると判断する政府高官もいるという。だが、日韓関係の悪化は避けたいと憂慮する政府関係者がゼロというわけではない。

「日本側は慌てず騒がず、毅然たる態度で臨むべきです。韓国側の揺さぶりに苦しむ企業が出ないよう、きめ細かなサポートが求められています。もし韓国で差し押さえの訴訟が起こされれば、政府が支援して反訴するような対抗策が必要です。日韓条約には調停の条項もあります。調停を要求しても抜本的な解決は無理でしょうが、貴重な時間を稼げます。その間に国際社会にアピールし、いかに韓国の主張が間違っているかを理解してもらうのです」(同・西岡氏)

 実は日本政府内にも韓国政府と韓国企業、そして日本政府と日本企業の4者で財団を設立し、慰謝料などを元徴用工に支払うという案が検討されているという。西岡氏は「愚の骨頂です」と手厳しい。

「安倍政権の前から、実務者レベルでは検討されてきた案だと聞きましたが、安易な妥協が最悪の結果をもたらすことを、私たちは目の当たりにしてきました」

 法治主義は近代国家の大原則。韓国の司法も世論も、もっと冷静になることが求められているはずなのだが、果たして聞く耳を持ってくれるだろうか?

週刊新潮WEB取材班

2018年10月29日掲載

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