「100円ショップ」戦国時代 勝ち組“下請け企業”の商品戦略とは

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下請けは無茶振りに応える気概と関係作りが必要

 井上工業のような下請け企業の倒産は、納入先のショップにもマイナスイメージを与えかねない。そこで、各社はこぞって改革を進めてきたという。

「業界全体として、自社のブランドを守る意味で、下請け企業を圧迫するケースは少なくなっています。セリアの場合は、商品のメーカーに販売状況を開示しており、下請け企業にとっては生産計画を立てる一助になっています」

 業界全体がホワイト化に向かってきたとはいえ、下請け企業の業績には当然差が出てくる。100円ショップから引き合いのある下請け企業は、どんな取り組みをしているのだろうか。

「いまの時代は、ロット調整(発注1回分の納品数)にも柔軟に対応でき、納期も融通がきき、年間数百種類の新商品を企画提案できるような企業が重宝されます。コストパフォーマンスの高いものを商品化できる企業も引き合いが強いです。その一例を挙げると、キャンドゥがプライベートブランド商品として『ダイヤモンドパフ』(鏡の曇りを取る商品)を企画した際、開発に手を挙げたのは主要取引先約100社のうち、1社だけだったそうです。ホームセンターなどで、1000円で売られているものを100円にするためには、相当な努力を要したことでしょう」

 ダイヤモンドパフは、一定の質を担保しながらも、生産コストを最小限に抑えるという企業努力があったからこそ、ヒットに繋がったのだ。ショップ側としても、こうした下請け企業との付き合いを継続したいと思うのは当然だろう。

 また、下請け企業のなかには、取引先のショップごとに専門部署を立ち上げているところもある。

「エコー金属は、セリア専門のデザイン部を立ちあげ、何度も繰り返し製品を提案し続け、完成度を磨き上げてきました。2012年には『ねじで壁に固定するアンティーク調のフック』がすごくヒットしたそうですね。試作段階から細かい要望にも繰り返し対応することで、顧客(セリア)と密な関係性を構築することに成功したといえます。これも下請け企業ならではの、一つの差別化のかたちでしょうね」

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