沢田研二の「脱原発」と「被災地への思い」、毎年3.11に新アルバムを発売

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聞いてから言え!

 ジュリーの詞には、以下のような言葉が並ぶ。

〈平穏まじめに暮らしてたのに 3月8日の雲は白く〉「3月8日の雲」より
 
〈終息してない福島〉「F.a.p.p」(※編集部註:フクシマ・アトミック・ パワー・プラントの略)

〈放射能に罪なし 人間こそ罪あり〉「Fridays Voice」

〈ごめん も一度探すよ 三年想いよ〉「三年想いよ」

〈櫻舗道 防護服着て〉「櫻舗道」

〈安全言わない 原子力委員長〉「こっちの水苦いぞ」

〈あちこちでガスも炸裂〉「涙まみれFIRE FIGHTER」

〈福幸は遠すぎて 光復を遠ざける〉「福幸よ」(※編集部註:「復興よ」の掛け言葉)

〈全て忘れ犀か象 五年経ったか犀か象〉「犀か象」(※編集部註:「再稼働」の掛け言葉))

〈濁流の 君よ生き還れ〉「揺るぎない優しさ」

〈TOKYOの国会に APP Yeah!〉「核なき世界」

「素晴らしすぎて発売できません」と一時は発売中止となったRCサクセションの反原発アルバム『Covers』を彷彿とさせる詞だが、U2のようなロック調あり、ポップスあり、バラードありで、実際に曲を聴くとメッセージ色はそれほど感じない。

「そこがジュリーですよ。作曲には長年一緒に組んできたバンドマンもいるから、往年のジュリーソングっぽいものもあったり、なによりもあの独特の声の艶が失われていないし、キーも変わっていないから、全体的に政治色を感じないんです。みんなね、詞を読むだけなく、ちゃんと聴いてから言えっての!」

 とは、ジュリーファンを自負する、ラジオパーソナリティでポピュラー音楽研究家の亀渕昭信氏(76)だ。

「ジュリーだってもう70歳ですよ。50年以上歌ってきて、還暦超えて、自分の意見を込めることができないようでは、逆にダメでしょう。ボブ・ディラン(77)だって、ブルース・スプリングスティーン(69)だって、井上陽水(70)だって桑田佳祐(62)だってオブラートに包んではいるけどそうでしょ。特にジュリーは昔から、政治や環境問題に興味があった人でしたし、今やそれが普通でしょう。彼は事務所からも独立して、CDだってほとんどインディーズのような格好で販売しているわけだから、縛りもなく、自分の意見を自由に込められるわけです。それでも彼は、特定の支持政党などは口にしません。あくまでも日々を過ごす中での彼の考え、想いであり、作品としてやり続けているところが、ジュリーらしくていいんですよ」(亀渕氏)

 ジュリー自身も、かつてインタビューにこう発言している。

「(憲法)9条も含めて、売れている頃は、そういうことは考えないようにしていました。考えて何かしようとしても、きっと周囲が止めると分かっていたから。でも、こんな年齢になったから、ちゃんと言っていかないと恥ずかしいですよね。集会やデモの先頭に立って、ではないけど。だって自分に無理のない方法でやらないとしんどいでしょう」(「毎日新聞」12年3月8日付)

 そんなジュリーの自宅から、前出の亀渕氏は「オールナイトニッポン」(ニッポン放送)で中継したことがあるという。

「これがジュリーの家のトイレです、なんて言って水洗の水を流したりね。ぼくの長いラジオ人生のなかでも、屈指の面白さだったと思うな。ジュリー? 人の言うことなんか聞くような人じゃないからね、あの人は。『嫌っ』て言ったら嫌な人なんです。それが分かっていれば、かえって気を使わずにすむし、ツッコんでいけるわけだけどね。それなのに、さいたまスーパーアリーナの件では、『客が入っていなければ嫌っ』て言ってたのに、スタッフが土下座したって言うじゃない。そんなことされたら余計に怒るのがジュリー。ファンはみんな分かってると思うけどね」(同)

週刊新潮WEB取材班

2018年10月23日掲載

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