小泉進次郎「化けの皮」が剥がれた?(新田哲史)

政治2018年10月23日掲載

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老いる日本の宰相にふさわしい器か

 小泉氏、秘書のH氏も、自身に関して7000字を超える大論考が掲載されることを知ったら、メディア観測の一環で本稿に目を通すかもしれない。ここまで読むと、不快指数も上昇しまくりで、筆者のことを少しだけ声のでかいアンチのネット民に思うかもしれないが、それは誤解だ。筆者は決して、安倍応援団の有識者にみられる筋金入りのアンチ小泉ではない。
 少なくとも初当選から衆院4期目のここまでの時点では、父の同じ時期より政界での実績は明らかにあると評価してきた。野党時代には人知れず、東北の被災地支援も行い、復興庁政務官としては熱心に交流。被災地復興と日本の未来を担う人材育成のために、福島県がふたば未来学園高等学校を開設した際にも尽力。開校時の生徒たちの校歌を初めて聞いた時には感涙に浸ったという(参照「週刊女性」2015年4月28日号)。
 私個人も彼には感心したことがある。何年も前、西日本のある地方選で自民系候補者の応援演説の現場にスタッフとして立ち会い、小泉氏が応援に来訪したときのことだ。その日の直前、地元の駅のホームで気分を悪くした妊婦が、ふらついた際に到着した電車に頭を強打し、亡くなるという痛ましい事故があった。
 ところが演説にきた政治家たちはこの事故のことに触れずじまい。しかし小泉氏は違った。詳しい文言は忘れてしまったが、すかさず事故のことに触れ、亡くなった母親に哀悼の意を示すとともに、転落防止のホームドア設置、子育てに優しいまちづくりの必要性を訴えた。率直にいって何も言及しなかった地元の政治家たちのことが情けなくなったが、応援先の入念な下調べで知られる小泉氏の演説は、それが地元民へのマーケティング目的だったとしても、心に残るものだった。
 ただ、そうした感傷的なエピソードだけで彼を評価していたわけではない。学生時代からインターネットを使っていた「ネット世代」の一人としては、小泉氏がこれからの日本の経済、社会の課題解決に向けてテクノロジーの重要性が高いことを理解しているところのポイントは高い。
 自民党の農林部会長として農業改革に向き合った際には、ブレーンになった農水省の若手官僚たちに、AIやロボットの活用などを持ちかけたという(参照:『小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉』扶桑社新書)。
 そうしたエピソードからも、洗練されたイメージに負けない中身も伴った政治家であると期待していたが、参議院の定数増採決の頃から政局的な立ち回りが露骨になって、疑問を感じはじめたのは先述したとおりだ。
 音喜多駿都議がブログで「闘いから逃げて、安全圏で恩恵だけを享受しようと立ち回った」と厳しく批判していたが、ときには信念を貫いて「冷や飯」を食う時期も経験しなければ、人間としての凄みが備わらないようにも見えてしまう。
 世襲議員特有のリスクへの恐れが本能的にあるのかもしれないが、際立った発信力を持つだけに完全に党内で粛清されることはあるまい。だからこそ、参院定数増のときにしろ、総裁選のときにしろ、安倍首相に逆らって一時的に干されたとしても、数年もすれば、小泉氏と親しい河野太郎氏が総裁候補として出てきた時に要職に復帰できるはずだ。
 もし、安倍晋三氏が最初に首相に就任したのと同じ52歳に小泉氏が宰相の座に就くとすれば2033年。その頃の我が国を取り巻く内憂外患は、安倍政権が直面するそれの比ではなかろう。
 国の人口推計(出産中位推計)では、総人口は2017年から約1千万人が減少し、65歳以上が3分の1を超えて久しくなる。財政が破綻状態になっているかは分からないが、東京オリンピック後に予測される景気後退の行く末次第では、税収が大幅に落ち込む可能性は高い。景気が持続しても、社会保障コストが増大し続けるのは確実だ。外交・安全保障に目を向ければ、日米安保体制を堅持していたとしても、中国は、2040年までに米海軍の太平洋での独占的地位を打ち破ることを国家的目標にしており、膨張する中国の軍事的プレゼンスにますます悩まされていよう。
 老いる日本のリーダーにふさわしい人物なのか。これからも小泉進次郎氏の動向を注視している。

新田哲史(にった・てつじ)
アゴラ編集長。1975年神奈川県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、読売新聞記者、PR会社を経て独立。15年に言論サイト「アゴラ」の編集長に就任。著書に『朝日新聞がなくなる日』など。

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