元公務員が訴えた宇佐市の「村八分騒動」 それぞれの言い分

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補助金が「きっかけ」

 亀山氏が宇佐市に移り住んだのは2009年のこと。兵庫に妻を残し、母親の介護のために単身で戻ってきたのだ。

「当初は、集落の皆さんとも仲良くやっていたんです。ところが、しばらくして『中山間地域等直接支払制度』(中山間制度)という補助金があることを知り、そのことを口にしたのが嫌がらせの始まりでした」(同)

 この制度は、高齢化が進む集落などが農業を維持するために国から補助金が支払われるというもの。当初、亀山氏は人に畑を貸していたが、途中から自分で農業を始めることになったため、制度について知っておこうと考えた。適用されれば亀山氏にも年間6万円ほどが支払われる。

「5年前の3月に、集落で中山間制度について話し合いがあったことを知り、区長(当時)に聞いたのです。ところが“あんたには関係ない”と相手にしてくれない。仕方なく市役所に問い合わせをしたのですが、それが目障りだったのだと思う。住民票を移していないという理由で自治会への加入を拒否され、市報も配られなくなりました。近所の人に声をかけても“あんたと話すと怒られるから”と逃げてしまう有様です」

 昨年11月には、亀山氏の申し立てを受けた大分県弁護士会が「人権侵害」を理由に是正を勧告。これに自治会が答えなかったことから、今回の提訴となったわけだ。

 一方、“顔役側”にも言い分はある。

「亀山さんはとにかく非常識。中山間制度についても彼が問題にしたので、市役所の仲介で話し合いが行われたんです。ところが“訴える”とか凄い剣幕で話にならない。実際、そのあと私は脅迫の疑いで告訴されたんです。そんなことから、自治会の寄合で亀山さんをメンバーから外すことになった。座長役の私以外が全員賛成でした。トラブルになるから補助金の受け取りも止めてしまいました。嫌がらせ? そんなこと誰もやりませんよ」(元区長)

 が、亀山氏は完全に“戦闘モード”である。

「今ここを出ていったら“負け犬”になってしまう。裁判で白黒つくまで住み続けるつもりです」

 小さな集落で起きた「村八分」裁判、どっちが勝っても残る傷は深い。

週刊新潮 2018年10月18日号掲載

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