拉致問題こそ「結果にコミット」してほしい(石田純一)

エンタメ 2018年10月17日掲載

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石田純一の「これだけ言わせて!」 第7回

 わが子に会えず、安否すらわからないということの辛さは、43歳から0歳まで5人の子の親である僕にとっても、想像するに余りある。拉致問題が進展しないのはなんとも歯がゆい。第4次安倍晋三内閣で、拉致問題担当大臣には菅義偉官房長官が兼任することになったが、なにしろこれまで遅々として進んでいない。

 北朝鮮が国際包囲網のもとで完全に孤立し、膠着状態にあったときこそ、日本が主導権を握って働きかけるべきだった。ところが、今や米朝首脳会談が開かれるご時世。アメリカに追随している日本としては、アメリカの本心が読みづらく、身動きがとりにくい。それに、北朝鮮は中国と緊密に連絡を取り合うなど、すでに方々にパイプを持っている。今さら拉致問題の解決に向けて圧力をかけようとしたところで、先方は応じやしない。こうなる前に動くべきだったのだ。

 安倍総理も外務省も全力を尽くしたが、どうにも進展させられなかった、というのなら仕方ないとも思うが、実際のところ、ほとんどなにもやっていない。水面下で進めている可能性も否定しきれないとはいえ、なんら結果に結びついていない。

 だが、今年こそ最後のチャンスなのだ。昨年は横田めぐみさんの拉致から40年、拉致被害者家族会結成から20年の節目で、11月に来日したトランプ大統領に家族会は面会し、直接、協力を求めた。とにかく時間がない。横田めぐみさんの父親の滋さんも高齢で体調が思わしくないという。健康なうちに被害者と再会できなければ真の解決とはいえない、と家族会は言うが、その通りだと思う。「いつか」では遅い。「健康なうち」に実現するなら、2018年は最後の年ともいえるはずだ。

 それでも、「拉致被害者全員の即時帰国」を目標に掲げていたはずの安倍総理は、事を前に進めているように見えない。めぐみさんの母、早紀江さんは数年前に安倍総理と面会した際、「金正恩委員長と目を見て、相対して会話しないと、解決しないと思いますよ」と伝えたが、安倍総理の回答は「もちろんそう思っておりますが、それはいまではない。いつになるかわからないですが、必ずそういう日は来る」というものだった。いつも期限さえ設定されず、なにも進まない。突き放しているのと同じである。早紀江さんは「期待するだけに、辛い思いをする」と語っておられた。

 韓国の文大統領が4月の南北首脳会談で、拉致問題に触れてくれた。トランプ大統領も米朝会談で話してくれた。もちろん日本側から依頼したのは間違いないが、こんな大事な問題について周辺国に仲介を頼むのもどうか、という声も聞く。それでも、一歩でも二歩でも前進するなら、それはそれでいいではないか。ただし、実質的な交渉までしてくれるわけではない。そこから先は、日本が力強く推し進めていくしかない。

 小泉政権下で拉致被害者が帰国した背景には、外務省のアジア大洋州局長だった田中均氏が主導しての、二十数回におよぶ準備交渉があった。横槍を恐れ、同盟国アメリカに事前に知らせず、「ミスターX」という得体の知れない相手と交渉し、核やミサイルの凍結という北朝鮮側の宣言を鵜呑みにして、危うく1兆円もの経済援助をさせられそうになった。そんなミスはあったものの、「拉致問題」では譲歩を引き出した。相手のペースや思惑でことが進んだと思われるが、それでも拉致被害者5人を帰国させた成果は小さくない。

 だが、いま、なんらかの準備をしているのだろうか。現実として、なにも進んでいないのは、やる気がないのと同じである。結果にコミットしていただきたい。菅さんは、一番のネゴシエーターだからこそ担当を任されたのだろう。タイムリミットは近づき、もうギリギリのタイミングだ。いつやるのか、と問われれば、「今でしょ!」というほかない。

石田純一(いしだ・じゅんいち)
1954年生まれ。東京都出身。ドラマ・バラエティを中心に幅広く活動中。妻でプロゴルファーの東尾理子さんとの間には、12年に誕生した理汰郎くんと2人の女児がいる。元プロ野球選手の東尾修さんは義父にあたる。