天皇のお住まいのそばにサグラダ・ファミリア!? 完成未定「蟻鱒鳶ル」

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 天皇皇后両陛下が2019年4月の退位後に仮住まいされる高輪皇族邸。閑静な高級住宅街として知られる当地のご近所に、いやに目を引く建物を発見! いやはや、これは?

「完成予定図のない家、ですかね」

 そう照れ笑いを浮かべて明かすのは、一級建築士の岡啓輔氏だ。“三田のガウディ”として知る人ぞ知る存在で、「蟻鱒鳶ル」と名付けられたこの建築物の主である。ちなみに「アリマストンビル」と読むそうな。

「嫁が『家を建てよう』と言うので、小さな空地を探していたんです。2000年頃、ここに40平方メートルほどの土地を見つけ、5年後に建設に着手しました」

 驚くべきは、躯体から内装まですべて、岡氏自身が仲間たちとコツコツ作り続けていること。建築学会の資料を参考に技術の習得に励んだ。コンクリートもお手製で、材料にもこだわっている。砂利は青森県産だ。

「地下にミキサーがありまして、砂と砂利とセメント、そして水を混ぜて作ってます。水を少な目にしているので、通常の3倍の強度があって、200年は持つと言う専門家もいるんですよ。それでも、月にかかる材料費はたった2万円ほどです」

 現在できているのは3階までで、4階建てにする予定だという。天井や壁のレリーフに至るまで、デザインはあくまで即興だ。実験の気持ちを忘れない。

「“これは恥ずかしいね”“気持ち悪いね”とか言いながらやっています。雨の日以外はだいたい作業をしていますね。実は、完成したら売ろうと決めているんです。どこかの美術館が買ってくれるといいのですが……。そして賃貸契約を結んでここに住めたらいいな、と」

 竣工は未定で、まさにガウディ。前代未聞の挑戦は続く。

週刊新潮 2018年9月27日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。