太宰治が愛した「銀座ルパン」 10月で90周年を迎える“最古”の文壇バー

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今は“名物ママ”の息子さんが店を守る

 店の名物ママとして知られた高崎雪子さんは95年8月16日に逝去。バーだが、和服姿でカウンターの中に立ち続けた。享年88歳。当時の週刊新潮は「銀座『ルパン』を彩った客とママの六十七年」の追悼記事を9月7日号の「CLUB」欄に掲載した。

 現在は、雪子さんの長男・龍彦さんが店を守る。1940年生まれの77歳。50代の時に雪子さんが大病から復帰したものの、再び店に立つことはできなかった。龍彦さんの姉が店を切り盛りする中、龍彦さんは大手百貨店の社員として定年を迎える。そして、姉からの“バトンタッチ”を受けた。

 90周年の感想を尋ねると、「面倒くさいことばかりの毎日です」と、まずは諧謔いっぱいの回答だ。

「母が再び店に立つため、リハビリに執念を燃やす姿を間近で見ていました。店を畳むのは簡単です。しかし、そんなことをしたら天国の母親が激怒します。それこそ祟られますよ(笑)。だから何より1日でも長く続けられるよう、気負わずに店を開け続けています」

 有名店だからこそ、“敷居の高い老舗”と敬遠する人もいる。龍彦さんは初めて訪れた客に「入りにくかったでしょう」と声をかけることもあるという。実際の店内は常連客の笑い声————極めて上品だけれども————が絶えないという極めて“庶民的”な雰囲気だ。

「昔からの常連さんも、いまだに訪れてくださいます。観光地というか、聖地というようなイメージで初めて足を運ばれた方もおられます。そこから何人か、必ず常連客になってもらえる。20代の若い方々がカウンターを占拠されたこともあります。外国人観光客もいらっしゃいます。母が作ったのは本物のバーでした。だからこそ、多種多様なお客さまに愛してもらえるのでしょう」(同・龍彦氏)

 ちなみに10月3日など、特別のイベントを開催する予定はないという。代わりに、90周年の「ささやかな記念品」を用意しているそうだ。

 名店だからこそ、どうしても「次の後継者」が気になってしまう。失礼な質問に龍彦さんは「子供は男ばかり3人です。何とかなるのではないかと考えています」と微笑を浮かべた。

週刊新潮WEB取材班

2018年9月28日掲載

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