キムタク「検察側の罪人」で好演、それでも日本アカデミー賞「優秀男優賞」を阻む“前科”

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木村拓哉は辞退、岡田准一と二宮和也は受賞

 前科とは何か。06年12月、日刊スポーツは「日本アカデミー賞 キムタクが優秀主演男優賞辞退」と報じた。その書き出しは「第30回日本アカデミー賞の優秀賞が19日、都内で発表され映画『武士の一分』の木村拓哉(34)が優秀主演男優賞を辞退したことが発表された」という衝撃的なものだった。背景解説の部分を引用させていただく。

《辞退理由は「最優秀賞を競う場には出させたくない」という、ジャニーズ事務所の意向だった。日本アカデミー賞協会は、同映画の配給会社松竹から間接的に受賞を知らせていたが、発表前日の18日に正式に辞退の連絡が入った。同賞は02年に映画「ホタル」の高倉健(74)が「若手にチャンスを」との考えで辞退している。しかし、会見で富山事務局長は「こんなことは前代未聞」と間違えて説明。ショックの大きさがうかがえた。

 ジャニーズ事務所にとっては当然の選択だった。映画に限らず歌や各ジャンルの賞レースに不参加を続けている。契機は90年の日本レコード大賞にさかのぼる。当時「お祭り忍者」でデビューした忍者が、希望の演歌・歌謡曲部門ではなく、ロック・ポップス部門にノミネートされたことを不服として辞退。87年には、近藤真彦が母親の骨つぼを盗まれ「レコ大を辞退しろ」と脅迫された。

 トラブルに巻き込まれたのもきっかけだったが、同時に同事務所内には「所属タレントに優劣をつけない」との方針も生まれた。SMAP、TOKIOなど人気グループを複数抱えるため、国内の賞レースでは所属タレント同士で競う場合が毎年のように生まれる。身内のランク付けを避けるため、不参加の方針が貫かれている》

 木村拓哉が辞退した第30回から最新の41回まで、最優秀主演男優賞と、いわゆる「ノミネート」にあたる優秀主演男優賞の受賞者を一覧にまとめてみた。

「14年の第37回までは、最優秀どころか優秀主演男優賞ですら、ジャニタレの名前は全くありません。それが15年の第38回で突然、岡田准一さん(37)が最優秀男優賞を『永遠の0』(山崎貴監督(54)/東宝)で受賞し、翌16年の39回では二宮和也さんが『母と暮せば』(山田洋次監督(86)/松竹)で連続受賞しました。ジャニーズ事務所が方針を変更したのは明らかです。ならば木村拓哉さんも受賞できるかと言えば、そうはいきません。07年に辞退した際、『日本アカデミー賞に泥を塗られた』と感じた会員はかなりの数に上りました。その記憶は、いまだに生々しいものなのです」(前出・映画ライター)

 ジャニーズ内部の問題もある。詳しいジャーナリストが指摘する。

「当時から、『最優秀を競う場には出させたくない』というジャニーズ側の説明は口実だとの説が根強かったんです。この方針はSMAPのマネージャーで、事務所を退所した飯島三智さん(60)が決めたとされています。この年の最優秀主演男優賞は『明日の記憶』(堤幸彦監督(62)/東映)の渡辺謙さん(58)で100パーセント確実とされていたのが理由です。つまり飯島さんは『優秀主演男優賞だけ名前が出て、最優秀が取れないのではカッコ悪い』と判断したようです。一方で岡田さんと二宮さんが最優秀主演男優賞を受賞できたのは、副社長の藤島ジュリー景子さん(52)が担当していたからでしょう。映画の賞レースに消極的だった飯島さんに対抗する意味もあり、しっかりと根回しをして、狙い通りに賞を取らせたわけです」

 今年、優秀主演男優賞に名前が挙がっているのは、

◆「孤狼の血」(白石和彌監督(43)/東映)役所広司(62)
◆「銀魂2 掟は破るためにこそある」(福田雄一監督(50)/ワーナー・ブラザース)小栗旬(35)
◆「万引き家族」(是枝裕和監督(56)/ギャガ)リリー・フランキー(54)

――といった面々だという。

 ちなみに同じジャニーズ事務所に所属し、大ヒット中の「劇場版 コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―」(西浦正記監督(50)/東宝)で主演を務めた山下智久(33)だが、彼が優秀男優賞を取る可能性も低いとされる。

「『コード・ブルー』はフジテレビが制作です。日本アカデミー賞は、日本テレビが同賞の発足から参画しているので難しいでしょう。同じように木村拓哉さんにとって最悪のシナリオは、二宮和也さんが優秀主演男優賞を受賞し、木村さんは受賞なしという結果です。木村さんの面子は丸潰れですが、日本アカデミー事務所が『今回だけは意地を見せる』と厳しく当たってくる可能性は否定できません。盾となるべきジャニーズ事務所も、あの“前科”が帳消しになるならと黙認するかもしれません。木村さんは、まさに今回は耐えなければならない時なのです」(同・映画ジャーナリスト)

 もちろん前回の辞退について、木村拓哉の責任はゼロだ。事務所の方針に、彼も振り回されているに過ぎない。それでも、“一世一代の名演技”を披露したとしても、賞レースに名乗りを上げられないというのだから、随分と酷い仕打ちに思える。

 一方で「たとえ好演でも、たった1本の映画で優秀主演男優賞は甘すぎる」という声があることも事実だ。次回の主演作で「検察側の罪人」を超える演技を見せてこそ、優秀主演男優賞……いや、最優秀主演男優賞の候補に相応しいはずだろう。

週刊新潮WEB取材班

2018年9月24日掲載

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