東京五輪「学生ボランティア」を“強要”… 文科省のご都合主義

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〈I WANT YOU〉は、見る者を指さすアメリカ軍の募兵ポスター。翻って、ボランティアの精神は、〈I WANNA DO〉。自発的な行動が原則なはずだが――。

 東京五輪ボランティアの応募が9月中旬から始まる。組織委が8万人、東京都が3万人と計11万人ものボランティアを募集する予定だ。が、実情は募集ではなく、“国策動員”だという声が教育現場から上がっている。

「文部科学省は大学側に対し、大会が始まる7月下旬までに授業や試験を終わらせ、学生をボランティアに行かせるよう通知を出しています。通常より3週間ほど、講義の日程を短くする計算になる」(大学関係者)

 この動きは、10年前から続く文科省の大方針と大きく矛盾するという。

「中央教育審議会で、講義のコマ数を厳守しなくてはならない、と打ち出したのは文科省自身でした。守らない大学には私学助成金の減額までちらつかせていた。そのため、最近の学生は祝日にも講義を受けているんです。3週間も短くされては、コマ数を確保する場所がありません」(同)

 自己矛盾なんてどこ吹く風。とにかく、タダ働きの人材が欲しいということだ。

 しかし、地方のある大学生は、ボランティア参加を、別の理由で諦めた。

「募集要項に交通費に関する項目もありますが、よく読むと滞在先から会場までのみ。地方から東京までの交通費や宿泊代は自費です。これでは、無償どころか赤字で臨むことになる。大学側に行けと言われても、学生の懐事情では参加が難しい」

 先の大学関係者は、文科省の今後の動きを警戒する。

「明らかな人員不足の場合、学生数に比例して、一定のボランティアの招集を促す通知が出る可能性がある。そうなれば、もう学徒動員の誹(そし)りを免れない」

 このままでは、〈I CANNOT DO〉の輪が拡がっていくだけだ。

週刊新潮 2018年9月13日号掲載

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