「東京五輪」ボランティアのブラック度(KAZUYA)

国内 社会

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 もしもこんな求人があったら……。

【業務内容】関係者運搬のための車の運転

【募集人数】1万〜1万4千人

【基本条件】1日8時間程度、合計10日以上

【待遇】無給(グッズプレゼント、活動中の飲食物は配布)、滞在先までの交通手段、宿泊は各自手配の上で自己負担

 ナメてるのかという待遇ですが、東京五輪の大会組織委員会が募集する、ボランティアの条件等をまとめるとこのようになります。もちろんこれは一例で、他にも様々な業務で9月から募集をかけ、組織委だけで8万人程度を募集します。

 自国で開催される五輪という性質上、タダでもやりたい人はいるでしょうが、東京都が募集する分も合わせると11万人も集まるのかは謎です。

 災害時のボランティアは無給というのはわかります。気持ちの問題だから当然の話です。しかし五輪は商業イベントの側面が強く、ボランティアを無償で、それも少数ではなく何万人も集めるのは違和感があるのです。

 運転手までボランティアにしてしまうのはどうなのか? せめてそこはお金を払って仕事としてやるべきだと思います。組織委はボランティア活動中の保険を用意するといいますが、もし事故が起きたら? 怪我をしたらと考えると不安にもなります。

 日経新聞の報道によると、大会組織委員会は各大学で説明会を開き、活動をわかりやすく紹介するチラシを30万枚配るといいます。さらに東京都は女優の広瀬すずさんを起用したPR映像を制作し、9月からはテレビCMとして放映されるとか……。

 いや、そのお金あるならボランティアに配れよ!とツッコミを入れてしまいます。それができないと言うなら、せめて宿泊先くらいはなんとかしろよという感じです。五輪期間はいやでも宿泊費が高騰するでしょう。長野五輪の時はボランティアの宿泊費が一部補助されたといいますし、逆に退化しているレベルです。夏のクッソ暑い時期に宿泊は自分持ちで無給となると、そりゃ難しい。

 社会人は大会前と期間中で10日以上も休むのは簡単ではないでしょう。1日2日程度ならば気軽に参加できますが、10日プラス事前研修もありますし、相当な気合が必要です。ボランティアの主力として期待されるのはやはり学生でしょうか。

 文部科学省とスポーツ庁は7月下旬、学生が東京五輪のボランティアに参加しやすいよう、授業や試験日程を弾力的に変更できることを全国の大学等に文書で通知したといいます。なんとしてもタダで人を集めたいという魂胆がミエミエですが、現代は奨学金を借りながら大学に通う学生も多いので、時間ができたとしても普通のバイトを選ぶのではないでしょうか。時間とお金に余裕がある学生がそこまでいるのか疑問です。

 Twitterを見ると「オリンピックボランティアに応募することにしました」と似たような文言で複数投稿があり、ボランティアの要件に批判が殺到しているため「工作ではないか?」と疑われています。その後、この投稿は削除されていますし……怪しい。

KAZUYA
1988年生まれ、北海道出身。12年、YouTubeで「KAZUYA Channel」を開設し、政治や安全保障に関する話題をほぼ毎日投稿。チャンネル登録者40万人、総視聴数は1億4千万回を超える。近著に『日本人が知っておくべき「日本国憲法」の話』(KKベストセラーズ)

週刊新潮 2018年9月6日号掲載

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