山田孝之、菅田将暉W主演「dele」 深夜ドラマならではのシンプルな面白さ

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「未解決の女」とはひと味違う相棒モノ

 4~6月期に同じテレ朝系ながらゴールデン枠(19~22時)の木曜ドラマでやってた「未解決の女 警視庁文書捜査官」(木曜21時~)も、鈴木京香(50)と波瑠(27)の相棒モノだったけれど、舞台が警察でレギュラー陣が多いうえに、脇に沢村一樹(51)、遠藤憲一(57)、高田純次(71)、光石研(56)、工藤阿須加(27)あたりまで揃えちゃったもんだから、物語も画ヅラもガチャガチャうるさかった。アレと比べると「dele」はすっきりしてて、山田&菅田のバディ具合や麻生の助演ぶり、つまりはデュオなりトリオなりのよさが際立ってます。

 それでいて、メニューを絞り込んだ寂しさショボさが薄いのがまた「dele」の座組みのうまいところ。「知る人ぞ知る級およびそれ未満のクラス」と書いた各回のゲスト陣も、ラッパーの般若(39)や水曜日のカンパネラのコムアイ(26)あたりを音楽ギョーカイから引っ張ってきたり、役者でも本多章一(39)に石橋静河(24)といった注目株、湯江タケユキ([50]「ハーフポテトな俺たち」!)に辻沢杏子([56]「翔んだライバル」!!)なんて懐かしい顔を器用したりで、飽きさせない。

 役者だけでなく、企画や脚本、演出も金城一紀や本多孝好、渡辺雄介、常廣丈太と映画クォリティーのなかなかな豪華さ。撮影、照明、編集といった画づくりもまた映画っぽくて、つまるところ絵物語としての基本がきっちり押さえられてるので、浮ついた揺れや緩みのない加減は見ていて気持ちがいい。そう、まさにいい肉をサッと炙って、軽く塩だけ振って……

 実はこの深夜ドラマ、出版とTVのメディアミックス企画で、番組の制作発表と同じタイミングで同じタイトルの文庫(本多孝好:著)がKADOKAWAから発売済み。ワタシの経験から言えば、メディアミックス企画に傑作なし。その理由は2つあって、その1は関係者の数が増えて舟が山に登ることであり、その2は企画や宣伝が先行して中身がついてこないことであり。

 その1については「dele」でも不安要因はあって、たとえばストーリー。初回はアクションありの社会派勧善懲悪系ミステリーだったし、その次は苦味の強い地味な家族モノという具合で、話がまだ2回しか進んでいないわりに物語の振れ幅が広いのよ。

 とはいえ、さほど心配はしていないのも事実。ストーリー枠の幅広さは、1話完結スタイルで脚本家の数も多い点を考えれば不自然じゃないし、むしろ当初から企図されたものだろうという気もしてね。

 相棒モノという枠組みは単調な一本調子のワンパターンを生み出しがちで、実際、前期の「未解決の女」は(文書捜査という縛りもあって)その穴に落ちていた。同じテレ朝系バディものでも、あの「相棒」はご存じのとおりストーリーの額縁が多種多彩かつ融通無碍で、あれだけ長いシリーズでも飽きさせない。「dele」も、企画や脚本に関わる筋の多さがジャンルの散漫さよりバラエティの豊かさにつながってるように思えます。

 もうひとつ、メディアミックスものにありがちな「映画版もあるでよ!」的な大風呂敷をドラマが当たる前から広げるような愚考とも「dele」は無縁。宣伝がフツーの深夜ドラマ同様に地味なのも安心ポイントで、メディアミックスに傑作なしという法則の数少ない例外になるかもしれません。

 それどころか、ゴールデン枠に進出した「dele」や「dele 劇場版」さえ見てみたいくらいなんだけれど、ま、とりあえずは深夜ドラマならではの豪華なシンプルさを楽しむことにして、まずは第3話以降に期待。見終わった後の夜中にウチで焼く、ちょっといい肉も用意して、と。

週刊新潮WEB取材班

2018年8月17日掲載

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