牧場の中に新幹線の駅ができる!? 北海道八雲町「常識破り」の整備計画

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徹底したリアリズムで観光振興

 新八雲駅は停車する新幹線のほうが少数派で、それほどの乗降客は見込めない。この点も町は折り込み済だ。先に見ていただいた通り、なるべく防音壁を建設せず、車窓から放牧地の光景を楽しんでもらおうとしている。通過する新幹線の乗客に対するPR効果も考えているのだ。

 だが、ここで気になるのは騒音だ。新幹線の通過音は相当なものがある。そして乳牛はデリケートな性格で有名だ。防音壁を少なくすると、牛への悪影響はないのだろうか。

「馬は騒音に馴れることはないそうですが、牛は馴れると聞いています。牛乳の生産などに対する悪影響はないものと考えています」(同・町役場)

 これほど独自性の高い整備計画となると、開業が近づくにつれ、マスコミに取り上げられることも増えるだろう。PR効果は極めて高い。日本全国から観光客が訪れたとしても不思議はないのだが、八雲町は徹底したリアリストのようだ。「本土から観光客が来てくださるとしても、基本的には少数だと考えております」と冷静だ。

「もちろん日本全国から大勢の観光客の方々が、私どもの町に来てくださるように努力は重ねています。しかし実際のところ、東京駅発の新幹線は大半が新八雲駅を通過するでしょう。わざわざ新幹線を乗り継ぎ、新八雲駅を目指す都民の皆さんが多数にのぼるというのは非現実的です。一方、幸いなことに、八雲町は新幹線で、函館市、札幌市と結ばれることになります。週末に函館や札幌の皆さんにお越しいただき、放牧地の光景を楽しみ、昼食はレストランで地元産品を味わっていただく。そして日帰りで帰宅されるというケースが主流になると考えています」

 同じように「開発を抑制した駅整備計画」を実施した自治体が存在しないか、八雲町は可能な限り探したそうだが、「1つも見つからなかった」という。

 確かにそうだろう。オンリーワンと断言してもいいはずだ。八雲町は小さな自治体だが、かなり大きな一石を投じているのは間違いない。

週刊新潮WEB取材班

2018年8月14日掲載

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