“カタカナタイトル”ドラマを一気に斬る!! パート(1)(TVふうーん録)

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「既視感ハンパねえ!」「あふれ出すいまさら感」「あの名作の劣化版を作ることが目的か?」「目新しさが1秒もなくて、逆にお見事」「認知度高い=数字が取れると思うなよ」「こんな駄作に名役者を無駄使いしやがって」。この夏のドラマは、文句と呪詛(じゅそ)の嵐である。とりあえず初回を観ただけでマーライオンのごとく呪いが口からあふれ出す作品の多くが「カタカナのタイトル」だったので、まとめてさっさと書いちゃおう。暑いから。まずは第1弾。

 さんざ手垢のついた「命がけで人生逆転罰ゲーム」を、何の新しさも吹き込まぬまま、延々と垂れ流す「ゼロ 一獲千金ゲーム」(日テレ)。いろいろありすぎて、主演していいのか、加藤シゲアキ。日テレは大接待枠を設けて、ジャニーズ事務所と心中を覚悟。薄々気づいていたが、人気と栄華に翳りが見えてきた汐留の泥舟感を再確認。

 たいした結末でもないんだから、1ゲーム30分くらいで描き切って、テンポよくすればいいのに。したり顔の加藤のシンキングタイムが無駄に長すぎる。ギリギリまで追い込まれる心理描写は限りなく薄い。福本伸行の原作漫画の面白さは、金に踊らされる人間の浅はかさと業の深さなのにねぇ。

 ただし、人気上昇中の若手イケメン俳優(間宮祥太朗・小関裕太・杉野遥亮)をまるっと揃えて並べた点、イケメンではないが、心理描写を体現できる加藤諒と岡山天音(あまね)を配置した点は、最後の良心だと思いたい。

 韓国の原作ドラマに加えて、アメリカ版もWOWOWで現在放送中、わざわざ同じモノを日本でやらんでもええ、と思うのが「グッド・ドクター」(フジ)。黒目の面積が広大な山崎賢人がサヴァン症候群の研修医を演じる。賢人のサヴァンテイストは悪くない。突き飛ばされても排除されても、キョトン顔の賢人。天才的な記憶力と診断力は総合診療に向いてるので、小児科外来の初診担当にすればいいのに。適材適所の職場環境を作れない病院の不手際ばかりが気になる。人が死ぬほどの猛暑に、ハートウォーミングと子供を巻き込むお涙頂戴感動劇を押し付けられても。マジ勘弁。

 最も酷いのは「サバイバル・ウェディング」(日テレ)だ。主演は最近いい作品にちっとも恵まれていない波瑠。出版社を寿退社した直後に破談し、無職になる。同じ会社の別の編集部で、再雇用の条件が「婚活して半年以内に結婚しろ」とな。

 そこは別にいいんだけど、恋愛&結婚のスパルタ指南をするのがドングリ頭の伊勢谷友介。上から目線で若い女に講釈垂れて、そらもう気持ちよさげな伊勢谷。ファッションにまつわる蘊蓄(うんちく)、貧乏人を都合よく排除するためのブランドヒストリー……この夏、最もどうでもいい話だ。元彼が風間俊介というズッコケ感。男が恋愛の講釈を垂れる構図の既視感。したたかな意思表示もなければ繊細な心情描写もなく、ただドタバタコメディに流されるだけのヒロインは悲惨な仕上がり。

 さて。第1弾ということは第2弾もある。カタカナタイトルの呪い、次週も。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2018年8月2日号掲載

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