「夏血栓」を作らないために! “隠れ脱水”チェック法と食生活のポイント

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盛夏の突然死を防ぐ総力ガイド(2)

 連日のうだるような暑さに参っている人も多いだろう。 酷暑の季節には熱中症はもちろん、「夏血栓」と呼ばれる肺血栓塞栓症、心筋梗塞も急増する。一見、健康な人でも、油断は大敵。外気が暑くなると、汗などで水分が体から出てしまうため、血液は1割以上も濃くなってしまうというのだ。(以下、「週刊新潮」2017年7月20日号掲載。※データは全て当時のもの)

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 専門家でさえ判断が難しいという、「夏血栓」が引き起こす症状。血栓そのものを作らないためにはどうしたらよいのだろうか。

脱水症状を知るシグナル

 人は何もしなくても1日に約900ミリリットルの汗をかく。夏になると、さらに増える。気を付けなくてはならないのが、本人も知らないうちに「隠れ脱水」になっているケースだ。

「寝ている間にも汗は蒸発しますから、夜のうちに脱水症状に陥る場合があるのです。朝起きたら手が動かなくなっており、病院に搬送されたら脳梗塞だったというケースもある」

 と語るのは、日本呼吸器学会に所属する専門医の大谷義夫医師(池袋大谷クリニック院長)。高齢になってくると夜中のトイレが近くなってくる。そのため、寝る前の水分を控える人も多いが、これも「夏血栓」には良くない。昔の人が「宝水」といって枕元に水差しを置いていたのは、医学的な理由があったのだ。

 老人の場合、体重に占める水分量は成人より約10%少ない。身体に水をためる能力が弱っているのだから、ちょっとしたことで脱水症状を起こし、血栓につながる。

「脱水症状を知るシグナルとしては、喉が渇くのはもちろん、口が乾燥して喋りづらい。唾を飲み込みづらい。あるいは“ツルゴールの低下”があげられます。ツルゴールとは皮膚に緊張がある状態を指しますが、自分で確かめることが出来る。手の甲の皮膚をつまんで持ち上げて離すのです。2秒たって戻らなかったら脱水状態が疑われます」(同)

 そこで、脱水症状に詳しい日本体育協会公認スポーツドクターの塩野潔氏に正しい水分の摂り方を教えてもらおう。

「夏の水分補給は100ミリリットルの水を20分〜30分に1回ぐらいのペースで摂るのが理想的です。出来れば吸収しやすいスポーツドリンク(あるいは経口補水液)や、ひとつまみの塩を入れた水ならなお良いです。水分を摂ったあとは、(汗で出てしまった塩分を補給するために)塩昆布や塩キャンディーをなめるのがいいでしょう」

 こうした水分補給は60歳以上、特に血栓を起こしやすい動脈硬化や高血圧を抱えている人は念入りに行ったほうがいい。

赤ワインが特に有効

 また、水分補給のほかに血栓を防ぐには普段の食べ物も大事だ。

「納豆に含まれるナットウキナーゼは血をサラサラにする効果があります。納豆の他には、赤ワイン、ココア、タマネギ、ゴマ、リンゴ、魚、ニンニク、ジャガイモなどにも抗血栓作用があると言われている。特に赤ワインは血栓の形成を抑える食品として注目されています。フランス人が肉や乳製品を大量に食べるのに、ドイツなどに比べて心疾患が少ないのは、赤ワインのポリフェノールのお蔭ではないかと見られているのです」(池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師)

「夏血栓」を防ぐには、何より水分補給、そして、普段の食生活に気を付けなくてはいけないのだ。

週刊新潮 2017年7月20日号掲載

特集「『西城秀樹』を地獄に落とし『坂上二郎』の命を奪った酷暑の『隠れ脱水』 『夏血栓』は致死率30%超!『夏ゴルフ』心筋梗塞を呼ぶ『魔のホール』は何番? 盛夏の突然死を防ぐ総力ガイド」より

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