妻殺害で「エリート銀行員」が母親と死体遺棄の衝撃――22年前にも酷似事件

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裁判で母親には執行猶予

 時計の針を一気に前に進めよう。母子の一審判決を紹介する。まずは「福島・郡山の高校生殺人判決 死体遺棄共犯の母に執行猶予」(読売新聞:96年12月11日朝刊)だ。

《福島県郡山市で今年8月、県立高校2年生だった少年(17)が、交際していた高校2年【※編集部註:原文実名】(当時16歳)を殺害し、遺体を山林に埋めた事件で、死体遺棄の罪に問われている少年の母親(35)に対する判決公判が10日、福島地裁郡山支部で開かれ、高橋隆一裁判官は「母親としての情に流された行為」などとして懲役2年、執行猶予3年(求刑・懲役2年)を言い渡した。

 判決などによると、母親は、長男の少年が金づちで頭を殴るなどして殺害した【※同前:実名】さんの遺体を8月27日夕、少年と共謀し、同市内の山林まで乗用車で運んだ》

 次は少年だ。「福島の女子高生殺害 少年に不定期刑 懲役5年-9年」(産経新聞:
97年12月18日夕刊)を見ていただく。

《昨年8月、福島県郡山市で交際中の女子高校生を殺害し、母親と一緒に遺体を山林に埋めたとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた同市内の元県立高校生の少年(18)に対する判決公判が18日、福島地裁郡山支部で開かれた。

 高橋隆一裁判長は「からかわれたことで激高するなど犯行は短絡的で自己中心的だ」として少年に懲役5年以上9年以下の不定期刑(求刑同5年以上10年以下)を言い渡した。

 判決などによると、被告の少年は昨年8月27日朝、同市内の自宅で、交際のもつれなどから【※同前:住所・高校名を省略、原文実名】さん=当時(16)=の頭を金づちで殴ったうえ、手やビニールひもで首を絞めて殺害。同日夕、母親(36)=死体遺棄罪で懲役2年、執行猶予3年が確定=と、遺体を同市西田町木村の山林に埋めた。

 高橋裁判長は「公判中の言動に反省の情がみられず、被害者に対して冷酷である」としたうえ、「矯正が必要である。社会人として立派に成長することを期待している」と少年を諭した。少年はうつむき加減にうなずいていた》

 熊本日日新聞社は96年8月28日夕刊に「社会的訓練の欠如 衝動的行動 大人の責任ない 母親の行動 識者に聞く」の記事を掲載した。その中で、故・小田晋氏(1933〜2013)のコメントを紹介しよう。

《小田晋筑波大教授(犯罪心理学) 母親には息子をかばおうという親心があったほか、無意識のうちに、息子を恋人的な感覚でとらえ(殺害された)女子高生をライバル視していたのではないか。そのために息子との共犯者意識が生まれたと思う。ただし、通常はこの段階で歯止めがかかるわけで、徹底的に社会的訓練が欠如していたと言わざるを得ない》

 判決も含め、今回の弥谷鷹仁・恵美の両容疑者が犯した罪を考えるにあたり、非常に示唆的だと言えるのではないか。

週刊新潮WEB取材班

2018年7月25日掲載

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