マダニ発生で被災地を襲うパンデミック 「西日本豪雨」に2次被害の危惧

社会週刊新潮 2018年7月26日号掲載

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「西日本豪雨」から約10日で、死者の数は200名を超えた。幸い生き残った人々も、過酷な環境に身を置く。危惧されるのは被災者たちを襲う感染症、パンデミックの恐怖。これ以上、2次被害で犠牲者を増やしてはならないのだが……。

 市街地の4分の1が浸水した岡山県倉敷市真備(まび)町は、今回の豪雨で最も被害の大きかった場所のひとつ。

 いざ街に入れば酸味のある甘ったるい匂いが鼻をつく。悪臭の源はいたる所に積み上げられた瓦礫の山。行政の処理能力が限界を超え、住民がやむを得ず捨てた災害ゴミが増大し続けているのだ。酷暑のせいで、廃材などにこびりついた下水を含む汚泥が乾燥し、粉塵となって舞い上がり匂いを拡散しているのである。

 時には辺り一面が黄色く染まって見えるほどで、被災者の中には、咳き込む人の姿も多く見られるが、

「不衛生な災害ゴミから、様々な病気が広まる可能性について懸念しています」

 とは、避難所の運営にあたる倉敷市の担当職員。

「粉塵の影響で、結膜炎の症状を訴える市民が出始めており、大量の防塵マスクを各避難所に配布しています。家屋などの消毒作業は順次進めていますが、ゴミの山まで手が回りません」

 増え続けるゴミの山が感染症の温床になると指摘するのは、国際感染症学が専門で地元・岡山にある吉備国際大学の服部俊夫教授だ。

「土石流や、堤防決壊によって勢いよく流れた水は大量の土を掘り起こします。その結果、普段は地表に出てこない様々な菌が飛散するのです。代表例が普段は土の中に潜む破傷風菌で、後片づけの最中に古釘で傷ができれば、容易に体内へと入ってしまう。発症すると最悪の場合、筋肉が痙攣して呼吸筋が麻痺、窒息に至りますが、早めに抗生物質を飲めば治療可能です」

 感染免疫学に詳しい、東京医科歯科大学の藤田紘一郎名誉教授はこうも言う。

「土中に生息しているレジオネラ菌も、土埃と一緒に吸い込めば肺炎症状を引き起こします。本来は感染力がとても弱い菌ですが、炎天下に晒され熱中症に近い状態の被災者であれば、体力や免疫力が落ちてしまい、感染リスクが上がります」

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