「水中担架」策、掘削策もあった! 「タイ洞窟救出」に検討された“4つの秘策”

国際週刊新潮 2018年7月19日号掲載

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タイ洞窟「決死の救出作戦」舞台裏(下)

 絶望視から一転、まさしく暗闇に光明が差し込んだかの如しである。タイの洞窟に少年ら13人が閉じ込められた事故はさる10日、全員の救出が完了した。折からの雨季で作業は大いに難航していたのだが、そこでは「4つの秘策」が浮き沈みを繰り返していた。

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 タイ当局が思案を巡らせた“秘策”は大きく4つあった。順を追ってご紹介するが、現場は、救出作業に加わっていたプロのダイバーが潜水の果てに6時間かけてたどり着いた難所。帰路においても5時間を要したというのだ。

 こうした状況で第1案は、

「当局は初め『4カ月分の簡易食を洞窟に届ける』と発表するなど、雨季が終わるまで待つ“長期戦”も視野に入れていました」(現地に駐在する記者)

 が、今後も豪雨が予想され、少年らの滞留場所は水かさが増していたため、

「体調のよい少年から順に潜水で帰還させる案が浮上。特殊部隊は4日から、彼らにダイビングを教え始めていました」(同)

 と、早くも第2案へのシフトを余儀なくされた。日本洞窟学会の水島明夫広報委員長が言う。

「洞窟で遭難した時、動かずに体力を温存すべきか、それとも地上への出口を探すべきかはケースバイケースです。ただ今回のような場合は、じっと待つほかありません。暗闇の中で、いつ来るかもわからない助けを待つというのは地獄の苦しみです。子どもたちは10日間、よく耐え抜いたと感心します」

 それでも、持久戦になると事情はおのずと異なり、

「洞窟内の気温は、その地域の平均気温と同じくらいと言われます。現地の平均気温は約25度で、レスキューシートもまとっているようですから寒さの心配はない。また湿度に関しては、100%であっても我々は生きていけます。身体的な面では、さほど心配はありませんが……」(同)

 むしろ懸念されるのは、精神面だという。

「探検家の中には、洞窟で生活する『滞洞』を行なう人もいます。しかしどんなベテランでも、1カ月も籠ったらメンタルが不安定になります。かつてNASAが半年間、洞窟に住まわせて人体への影響を観察する実験を行なったところ、被験者は1年後に自殺してしまいました」(同)

 2010年8月に発生したチリ鉱山の落盤事故は記憶に新しい。この時、33名の男性作業員は69日ぶりに無事救出されたのだが、今回は年少者であり、雨季が終わるまで、約4カ月。それゆえ当局は少年らに潜水を教え、ダイバーが付き添い帰還させるプランを実行したわけだ。

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