PTA予算横領で逮捕! 「子供のための組織」がなぜ悪用されるのか

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使途不明金2800万円!

 熊本県内にある県立高校のPTA会費などを横領した容疑で24日、県警は同校の元後援会職員の女性(56)を逮捕した。

 とりあえずの容疑は110万円の横領となっているが、使途不明になっている金額は約2800万円にものぼるという報道もあり、今後さらに容疑が追加される可能性もある。

 PTAの会員となる親たちは、ボランティア的な労働を強いられるのが通常である。きっと同校の父母もそうだっただろう。

 ところが一方では多額の予算を管理し、一部の人間が好き勝手に使っていたのだとしたら、一般の会員たちは堪ったものではない。

 しかし、「PTAの中に一部、職権を乱用して利権を得ている者がいるというのは、別に珍しいことではありません」と指摘するのは、ノンフィクション作家の黒川祥子氏だ。黒川氏は新著『PTA不要論』の中で、「本部役員」の知られざる裏側をレポートしている(以下、同書より抜粋、引用)。

選挙活動としてのPTA

 たとえば東京23区北部に住む女性Aさんの経験。彼女のかかわったPTAでは、本部役員を父兄が投票などで自由に決めることができなかった。

「古くからの商店街にある学校なので、歴代の役員の方々が皆、近所にお住まいなんです。前前会長、もっと前の会長とかお歴々が『顧問』として君臨しているんです。その方々に、なんでもお伺いを立てないとダメなんです。役員決めもそうです。そういうお歴々に打診しないと……」

 問題は、そうした立場を欲する人たちの動機が「子供のため」ではない点だ。彼女がかかわったPTAの会長は塾の経営者で、区議会議員を目指していた。「そういう人には地元の小中学校のPTA会長というのは自分に箔をつけ、名を売る、絶好のポスト」なのだという。

業者との癒着

 地縁などに基づいた人間関係には良い面もあるのだろう。が、往々にして新参者に対して排他的なムードをつくったり、あるいは見下したりということもあるという。それだけならまだしも、金銭面でのルーズさを招くこともあるようだ。

 都内のPTAで広報委員を務めていた母親Bさんはこんな経験談を語っている。PTAが製作している広報紙の印刷代金がかなり高かったので、彼女は別の業者に替えて、予算削減に成功。本来ならば褒められるはずだったが、Bさんのところに地元に長く住む副会長が怒鳴り込んできた。

「今まで長いお付き合いで、お世話になっている地域の印刷屋さんなんだから、勝手なことをするな!」

 Bさんは呆れながらこう語る。

「皆さんから会費を集めているんだから、少しでも安くするのは当たり前でしょう。どうして、その高い業者にお願いしなきゃいけないのか、その理由は全くわからないです。広報紙に使う紙も分厚い、高い紙を使うし、訳がわからないです。安くてもいいでしょうに。地元業者とPTAの癒着ってあるんでしょうね」

 Bさんは、この怒鳴り込んできた副会長の子供が卒業したのを機に、組織の改革にチャレンジした。それは一時期は上手くいったものの、すぐに元に戻されたという。Bさんの子供が卒業したあと、なぜか元副会長が「補佐」として復帰してきて、以前のシステムに替えてしまったからだ。

宗教団体との関係

「もう、知りませんよ、バカらしくて」と語るBさんは、最後にもう一つ心配事を打ち明けた。
「確たる証拠があるわけではないのですが、特定の宗教団体が今、PTAの本部役員にかなり入り込んでいると、皆さん、おっしゃいます。PTAに参加すると、団体内部でのランクが上がるとか。その副会長も、どうもそうだったようです。これは非常に問題なのですが、PTAの名簿を1冊、その方がご自宅で管理なさっていたんです。PTA名簿には、それぞれの家庭状況も書かれているんです。だから、校長室や学校の金庫、PTA室など、鍵の掛かる場所で管理するはずなのに。家庭の状況が丸わかりになっているものをその方が私有していたって、なんだか……、気持ちが悪いですよね」

 むろん、多くのPTA会長や関係者は善意で子供たちのために努力しているのだろう。
ただ一方で、任意団体であるがゆえに外部からの監視の目が行き届きづらいという欠点をPTAは内包している。横領や私物化といった問題の根はそこにあるのではないか。

デイリー新潮編集部

2018年6月28日掲載

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