金正恩が米朝会談で1泊82万円のホテル代を払わない本当の理由

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北朝鮮の外務省には予算なし

 では、専門家はどう見ているのだろうか。北朝鮮の真意を、東京通信大学の重村智計教授(72)に解説してもらおう。

「まず、仮に北朝鮮が宿泊費を払うとしましょう。行政組織上、どこが負担するかという問題になります。結論から言えば外務省です。ところが今回の米朝会談は、突然、決まりました。年間の予算には組まれていません。しかも在外公館に『自分たちの食い扶持は現地で稼げ』と指令するほどの緊縮予算です。余裕もまったくありません」

 もちろん金正恩を直接、担当する国家中枢の部局には、ふんだんな予算を持っている。だが、いくら外務省の幹部でも「シンガポールの宿泊費は、そっちの部局で出してください」と要請できるはずもない。

「決死の覚悟で打診したとしても、金正恩は『アメリカ側が会談をしようと言っているのだから、向こうに出させればいいだろう』と答えるはずです。実は既に北朝鮮は、アメリカから旅費や宿泊費の援助を受けているんです。米朝は事務レベル協議をシンガポールやニューヨークで行っていますが、この“一部”の費用はアメリカが負担していると、関係者から私自身が聞いています。ちなみに“一部”は相当に配慮した表現でしょう。実際は全額に近いと思います」(同・重村教授)

 当たり前だが、こんな国家は北朝鮮だけだ。世界中のどんな国でも、旅費を相手国に負担してもらうなどというのは屈辱に等しい。

「しかし、北朝鮮は違うんですね。北朝鮮にとってアメリカとは、これまで常に『不倶戴天の敵である米帝国主義者』と罵ってきた国です。帝国主義者に金を使わせるのは正義なのです。また韓国でも北朝鮮でも、『酒の席に誘ったほうが勘定を払う』『貧乏人が金持ちにおごらせるのは、徳を積ませる行為』という常識、慣習があります。いずれも、今回の米朝会談にも当てはまるわけです」(同・重村教授)

 北朝鮮も払わない、アメリカも払わないとなると、消去法で第3国となってしまう。シンガポールや韓国が肩代わりするシナリオも現実味を増してきそうだ。

 いずれにしても、北朝鮮のメンツは、こんなことでは潰れないのだろう。そういえば、かの国は「厚顔無恥」で知られていた。

週刊新潮WEB取材班

2018年6月9日掲載

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