熟練医も見逃す「胃がん」をキャッチ AIが切り拓くがん治療の最先端

ライフ週刊新潮 2018年5月24日号掲載

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AIが切り拓く「がん治療」の最先端(2)

 日本人のがん死亡で部位別3位、罹患率では1位という胃がんで、AIと“共闘”を続ける医師がいた。

 今年1月、東京のがん研究会有明病院と埼玉にある民間クリニックなどのチームが、胃がん診断において世界で初めてAIを活用、アメリカの専門誌に論文を発表したのだ。

 6月にも実用化に向けた装置を世に送り出す予定だが、その論文の中身は、内視鏡によって撮影された画像を基に、胃がんが発症しているかどうかをAIが判断するというもの。驚くべきことに、その正答率がなんと98・6%。おまけに、2296枚の画像を47秒で解析すると聞けば、1枚あたり0・02秒で「がんの有無」を識別している計算になるのだ。

 開発メンバーの1人で、ただともひろ胃腸科肛門科(さいたま市)の多田智裕院長が言う。

「なぜ埼玉で内視鏡診断AIの開発を?と思われるかもしれません。実は、さいたま市は日本で初めて胃カメラが開発された土地で、医師会の皆さんも全国をリードしていこうとの気概があるんです。そのため市民健診で40歳以上は年1回1000円で胃カメラが受けられます。一方で、胃カメラって1人50枚くらい撮影するんですね。私が所属する浦和医師会だけでも年250万枚の写真を、わずか70人の専門医がチェックする。医師の集中力、能力の限界を完全に超えているんです」

 そんな環境で患者と向き合う中、多田氏は「画像認識能力において、機械が人間を上回った」というニュースを耳にする。

「毎年、AIの画像認識能力を競うコンテストが全世界合同で行われているのですが、2015年2月、とうとうAIが人間の能力を上回る結果を出したのです。AIの権威である東大の松尾豊教授も、講演でAIを『機械に目ができた』と評しました。それを直接聞いた時、医療の現場に応用できないかと考えたのです」

 そう振り返る多田氏は、まず自ら運営するクリニックやがん研有明病院に保管されていた胃がんの内視鏡画像1万3584枚を、チームのメンバーと共にAIに機械学習させたという。

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