【自衛隊OB座談会】予測されていた米朝会談決裂――米軍先制攻撃は9月までに80%?

韓国・北朝鮮新潮45 2018年6月号掲載

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 北朝鮮と韓国が演出した「平和劇場」が破綻した。トランプ大統領であっても、アメリカは、にわか仕立ての「和平」に騙されるほど愚かではないのだ。

 歓迎ムード一色の時から、すでにこの和平がまやかしであることを指摘してきた自衛隊幹部OBら4人の座談会が「新潮45」6月号に掲載されている。

 元衆議院議員で防衛庁政務官を務めた米田建三氏を司会に、元海上自衛艦隊司令官の香田洋二氏、元航空自衛隊補給本部長の尾上定正氏、拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司氏が、そこでアメリカの対応を細かく分析する。

 アメリカがどうして会談を中止したのか。そして北朝鮮をどうとらえていたのか。記事はその内実を余すところなく伝えている。(以下、「新潮45」2018年6月号より抜粋、引用)

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“前提条件”の相違

香田 問題になるのが、まさにポンペオ(※前CIA長官で、現米国務長官。3月末から4月に極秘訪朝し、金正恩委員長と面会した)が言ってきた、米朝首脳会談を開催する「前提条件」です。これは両国の主張する“非核化の定義”には、明確な相違があるということ。米国は、“北朝鮮の非核化”で、まさにCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な核解体)ですよ。北は、“朝鮮半島の非核化”で、自国の非核化とともに在韓米軍撤退まで視野に置く話です。米国は北朝鮮に約束して既に戦術核兵器は韓国から引いてますから、現在の在韓米軍は核は持っていません。しかし、米軍は“核を運用する能力を有する”軍隊だから、米軍がいる限りは朝鮮半島は非核ではないというのが北の理屈です。
 金正恩が北京で習近平と会談したときに、「非核化の定義では、バックアップして欲しい」と頼んでいるはずです。中国にも、在韓米軍がいなくなるのは、渡りに船。最終的な敵は米国ですから。
 この非核化の定義自体“水と油”ですが、ポンペオが北、すなわち金正恩との交渉でここをどこまで詰められたか。おそらく詰め切れてはいないと思います。

米田 北朝鮮の深謀遠慮ですね。だとしたら、米朝首脳会談を、前提条件を曖昧にしたまま、開催するのでしょうか?

開戦は9月?

香田 おそらく決まらないまま開催します。

米田 決まらないままやりますか。決まらないままやって、席を立つ?

香田 物別れでしょうね。そして、決裂した場合、米国の北への先制攻撃の可能性が濃厚に出てきます。5月の段階で瀬踏み交渉と並行して巡航ミサイルや精密誘導弾の集積など本格的な備蓄に入るでしょう。

米田 先制攻撃の確率は。

香田 私は、9月までに80%とみています。

尾上 私も会議開催自体の可能性は、半々と見ています。そこでは明確な合意にはたぶん至らないでしょう。

川上 これ、頭で考えると、会談は行われないのです。感覚的に考えると、やはり開催されて、曖昧な合意を生む気がしますね。

米田 私は、開催されてひどく曖昧な妥結に至る可能性が圧倒的に高いと見ています。

川上 実際、トランプが金正恩と会って、意気投合した場合、ブレーンが考える戦略など、どこ吹く風と無視する可能性はある。合意できれば、国民の支持を得られる、中間選挙の勝利もあり得るとその場で考えたとしたら、日本にとって最悪のシナリオ“北の核を曖昧な形にして、南北統一の話し合いに入る”にもなりかねない。そこをいかに回避するか。日米首脳会談では、安倍総理もトランプに、相当ねじを巻いたとは思いますが。

香田 そこは日米で足並みの乱れは全くないと思います。まさに“不可逆的かつ完全に”という声明で、あれがボトムラインです。
 トランプ大統領、多少のぼせているところはあるけれど、ポイントは押さえているし、おそらく今回はもう妥協できないはずです。いくらトランプが自分が歴史的会談をやった、と自画自賛しても、蓋を開けてみたら現実は“妥協の産物じゃないか”と解った途端に、米国人は手のひらを返しますよ。中間選挙では敗北します。ですから、ここは米国の条件は譲らないはずです。

米田 まだ水面下の折衝は、ぎりぎりまで続けられるんでしょう。

香田 ええ、やっているでしょう。

米田 そうすると、まだ米朝首脳会談が行われるかどうか先行き不透明ですが、アメリカに妥協する気がないと仮定すれば、開催されない可能性も残ります。そのあたり如何ですか。私は、どうしてもトランプが軽率にだまされてしまわないかという不安が拭えない。

尾上 私も妥協はしないと思います。ただし、トランプの考える“妥協ではない”というポイントが、日本からすれば“妥協にすぎない”ように映るという“ずれ”が生じる懸念は残る。例えば、検証は2020年までに段階的に実施するという条件での合意など。しかし、日本にいる在日米軍は、対中国戦略上、非常に重要な前方展開戦力ですから、そこをターゲットにした北朝鮮の核の脅威は見過ごせない。米国とすれば、絶対に容認できないことです。
 この間の安倍総理とトランプ大統領の会見を見ても、「完全かつ検証可能で不可逆的」との共通認識ですし。ただ、若干気になったのは、安倍総理がその中で、拉致問題とミサイルを含めての完全かつ不可逆的な検証というふうに言った点。これがかなりハードルを上げています。核に限定する方が得策です。交渉には、ハードルを上げて、少しずつ妥協していって合意点を目指すという戦略もあります。しかし、あまりにも上げ過ぎると、一番肝心の“日本に対する核の脅威”を完全に排除するという必達条件が曖昧になる恐れがある。トランプ大統領に、日本が言い続けるべきは、非核化は、ICBMの非核化だけではなく、短距離、中距離全部を含んでの非核化という点です。
 北の核問題は、半年前に比べて、状況が一転したようにも見えますが、軍事的な圧力と経済制裁が効き出したからこそ、北は中国に泣きついたというのが実態だと思います。その意味でも、このポイントだけは絶対に外さないで、今後も主張し続けるべきです。(後略)

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 全文は「新潮45」2018年6月号に掲載。米朝交渉の行方に加え、北朝鮮の核兵器の完成度、米朝国交樹立の可能性や、日本のとるべき道などを10ページにわたり論じる。